隣人

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ここ数日はずいぶんと暖かくなって来た。 新しいアパートや環境にも慣れたし、海未ちゃんともけっこう打ち解けたと思う。 前みたいに道端で会ってもギョッとされなくなったし、フリーズされることも少なくなった。 時々 学生でお腹を空かせているだろう、と ご飯を食べさせてくれたりもする。 海未ちゃんの仕事先のカフェに遊びに行った時は 何かとオマケしてくれたりもした。 カフェで仕事をしている時の海未ちゃんは いつもとはちょっと違う。 「あのポニテのおねえさんが海未ちゃん? なんか真斗から聞いてるのと雰囲気違うな〜。」 以前 悪友と一緒にカフェに行った時 そう言われた。 いつもの海未ちゃんは どちらかというと無口で陰キャだ。 でもカフェの海未ちゃんは テキパキしているし、声も大きかった。 営業スマイルなのか いつもにこやかだし。 「まあまあ可愛くね?あー、スタイルは あっちのおねえさんの方が 良いけどさー。」 と、胸の大きいほかの店員を指さして悪友は言った。 バカか。なんてゲスい事言うんだ。 なんだろ… いつも仲間内でしてる同じような会話なのに 何故か海未ちゃんのことを こんなふうに言われるとムカついた。 学生のオトコなんて たいていバカみたいな事を言い合ってるっていうのに、いつもならオレだってもれなく こんな事を言う一人なのに……なんだ? 一生懸命に働いてる彼女を こんな馬鹿な会話に登場させたくなかったのだ。 オレも 大人になったのか? 仕事をしている海未ちゃんを見ながら ぼんやり考えていた。
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