(2018年完結)ドラゴン・パーク(竜宮へようこそ編)サイドストーリー①

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(2018年完結)ドラゴン・パーク(竜宮へようこそ編)サイドストーリー①

 たにぐち  神々の住まう場所、高天原。その高天原の南に神々のテーマパーク、竜宮城があった。  ここは龍神達の生活する場所でもあり、龍神達の仕事場でもある。  テーマパークなので龍神達は他から来る神々をもてなす仕事を請け負っていた。  これはその高天原内の竜宮で働くある龍神の日常話である。  「おい、そこのお前、なんで俺様んとこに来たんだよ……。」  黄緑の短い髪に謎のシュノーケルを差している着物姿の男が呆れた顔で目の前に佇む少女を見ていた。  「はいぃ!私は谷龍地神(たにりゅうちのかみ)と申しますっ!志望動機は私が祭られていた谷村(たにむら)の活性化のためですっ!元気と勇気で頑張ります!よろしくお願いしますっ!」  少女は緑色のおかっぱ頭を何度も男に向かって下げた。  「あー……いやいや……志望動機を聞いたんじゃなくてだな……。なんでここに来たのかって聞いてんだよ。」  黄緑の髪の男は頭を抱えながら少女に声をかけた。  「え?で、ですから……谷村の活性化のため……」  「ちげぇって!お前、ここ、竜宮と勘違いしてんだろ!ここは竜宮じゃねぇよ。ここは竜宮ツアーコンダクターの詰め所だぜ。お前さ、今日、竜宮で面接受けにいくやつの一神だろ?」  「え!」  男の言葉で少女の顔がじわじわと青くなっていった。  少女がそっと上を見上げると男の頭の上辺りに『ツアーコンダクター』と汚い字で看板がぶら下がっていた。  「とんだ馬鹿野郎だな。もう面接時間過ぎちまってんぞ。オーナーは時間にうるせぇからなあ。……遅刻は特に嫌うぜ?竜宮はここからかなり遠いし、もう間に合わねぇな。かわいそうに。」  「そんなあ……。」  少女はぺたんとその場に座り込むとしくしく泣き始めた。  「あ!おいおい!泣くなよ。……んー……お前、まだ龍神になって間もないだろ?……仕方ねぇから俺様がオーナーの代わりに面接してやるぜ。外見年齢は十四……五だろ。」  「はい……今年で十四です。本当に面接してくれるんですか!?」  少女は先程の絶望しきった顔から一転、目を輝かせた。  「面接はしてやる。後は天津彦根神(あまつひこねのかみ)、オーナーの判断だ。ああ、俺はツアーコンダクターの龍神、流河龍神(りゅうかりゅうのかみ)だ。皆からはリュウと呼ばれている。」  リュウと名乗った目つきの悪い緑の髪の男は椅子にドカッと座ると指でこんこん机をたたいた。  「は、はい!お願いします!」  少女は再び深くお辞儀をした。  「で……お前、名前なんだっけ?谷口(たにぐち)だっけ?日本人の苗字みてぇだな。」  「あ……いや……谷龍地神(たにりゅうちのかみ)です。『たにりゅうち』です。」  少女はひかえめにリュウが言った名前を訂正した。  「たに……なんだって?『たにぐち』にしか聞こえねぇな……。滑舌が悪い。んん……タニでいいか。」  リュウは勝手に『タニ』というあだ名を少女につけた。  「……たに……。」  勝手にあだ名をつけられた少女、タニは困惑した顔をリュウに向けた。  「んで……志望動機はさっき聞いたし、後は……オーナーは何を聞くかな……。んまあ、こんなんでいいか。」  「……では……採用……。」  タニが輝かしい顔でリュウを見据えたがリュウは机をこんこんと指で叩くと首を横に振った。  「採用かどうかはわからねぇ。俺はお前を推しておいてやるよ。だけどなあ、オーナーの面接に出てないってのが痛ぇよなあ。ああ、一つ、オーナーが面接の最後に絶対言う言葉がある。」  「は、はい……。」  また不安げな顔に戻されたタニは身体を震わせながらリュウの言葉の続きを待った。  「時間厳守、ルールは守る、客に対する言葉遣い、これは必ず守る事。それから、遅刻した者とルールを破った者は例外を除いて厳罰の対象だ。わかったか?」  「は、はいぃ!」  リュウの低く鋭い声にタニは震え上がった。  「とまあ、こんな感じだな。オーナーは厳罰も容赦ない。注意しろよ。採用されたらな。合否はのちにオーナーが伝えるだろ。この面接内容とお前の外見、やる気、一生懸命さをオーナーに報告しておくから採用されたらまた会おうぜ。」  リュウは鋭い感じを解き、柔らかい笑みを浮かべた。  「は、はいぃ!お願いします!」  タニは背筋を伸ばし、再び深くお辞儀をした。  タニが意気込んでいるとガララと障子戸が開いた。ここは古民家のような造りである。障子戸も立て付けが悪いのかスムーズには開かなかった。  「……ん。客だな。ちょっとどいてろ。邪魔だ。」  リュウが再び鋭く言い放ったのでタニは慌てて横に避けた。障子戸からこれから竜宮のツアーを頼みたい客神がぞろぞろと入ってきた。  「はい。こちら、竜宮ツアーの組み立て、それからご案内をさせていただいております。わたくし、ツアーコンダクターの『流河龍神』でございます。本日はどういったご用件で?」  リュウが先程とはまったく違う話し方で客の相手をしていた。  「顔もニコニコ……。」  タニはリュウの変貌ぶりに驚きつつ、どこかかっこよくも見え、ただ茫然とその場に立ち尽くしていた。    タニはなぜだか竜宮の面接に合格した。リュウに感謝の念を抱きつつ、夏も近づく竜宮城にやってきた。ここは竜宮のリゾート地のビーチ前である。まだ時期は早いので目の前の美しい海に入って遊んでいる客はいない。  タニはこの美しい海辺でなぜか待たされていた。  「あー、わりぃな。時間ぎりぎりになっちまったぜ。ああ、俺様の事、覚えてるか?」  タニがぼうっと待っているとリュウが慌てて走ってきた。  「あ、リュウ先輩ですね!この間はありがとうございました!」  「りゅ……リュウ先輩だと?」  タニの深いお辞儀をリュウは戸惑いながら見ていた。  「無事に合格できました!今日は竜宮で働く初日なのですがこの海辺で待つようにとの指示で……」  「ああ、そりゃあ、俺様を待てっていう指示だぜ。これから俺様が竜宮へ行く門を開く。ちなみに竜宮はこの海の中だぜ。そんでお前には従業員用の入り口の開け方を教えてやる。後、一、二か月もすりゃあ、ここは観光客で一杯。繁盛繁盛の地獄が始まるわけだ。従業員用の入り口の開け方がわからなきゃあ、一生竜宮には入れねぇよ。」  「りゅ、竜宮って海の中にあるんですね……。」  タニの発言にリュウが盛大にため息をついた。  「はあ……お前、そんなことも知らずに面接受けに来たのか?正確に言えばこの海の下だ。まあ、行ってみりゃあわかるぜ。」  「は……はいぃ!お、お願いします!」  タニが背筋をピンと伸ばしてリュウに言うとリュウはケラケラと笑っていた。  「ははは!あんた、かてぇな。ガチガチだ。緊張してんのか?」  「は、はぃい!た、谷村の信仰心のため全力で頑張りますっ!」  タニの生真面目な返答にリュウはさらに笑い出した。  「はははは!ダメだ、なんかツボに入った……。ひひひ……。『は、はいいっ』って……はははは!」  リュウがデカい声で笑っていると横から突然女性の声が聞こえた。  「もし……リュウ様……。……と、タニ様?」  「ん?」  リュウとタニが声の聞こえた方を向くとそこにはきれいな女性が立っていた。女性は京都の舞子さんのような恰好をしており、眉毛をマロ眉にしている可愛らしい方だった。  背中には緑の大きな甲羅をしょっている……。  「……甲羅……ああ、亀さん!カメさんですね!」  タニは龍神の使いの亀だと雰囲気で読み取った。ちなみに神々の使いは皆、動物で人型をとっていないものを漢字で人型をとっているものをカタカナで表記する。  この亀は「亀」ではなく「カメ」である。  「ああ、やっぱりわかっちゃったさね?そう、わちきはカメです。龍神の使いさね。」  カメはサバサバ、オドオドどっちともとれる感じで自己紹介をしてきた。  「よ、よろしくお願いします……。」  タニが深々とお辞儀をする横でリュウはなぜかニヤニヤしていた。  「おう、カメ!ずいぶんと偉そうじゃねぇか。新神(しんじん)に対するあれか?」  「りゅ、リュウ様……もういじわる。」  カメは戸惑いながらリュウを睨んだ。  「ほら、カメ、タニに説明してやれ。さっさとしろよ。俺様がオーナーに大目玉くらうからな。」  リュウはカメに鋭く言い放った。カメはビシッと背筋を伸ばすとタニに説明を始めた。  「タニ様、わたくし達カメは竜宮へ行くための乗り物もやっておりますし、おもてなしの踊りも担当しております……えーとそれから……龍神様達のお世話もしております。えーと……それで……従業員用の扉の開き方を教えてあげるさね。」  カメはたどたどしく敬語を使うがリュウに一喝された。  「言葉遣いがなってねぇなあ……。龍神に丁寧語が使えなきゃあお客に接する事なんてできねぇぞ。」  「……リュウ様だって同じさね!龍神様は気性が荒いから丁寧に接する事ができないさね。リュウ様が一番たどたどしいさね!」  カメも負けじと声を上げるがリュウが持っていた柄杓でぽかんと頭を叩かれていた。  「うっせーな。おら、生意気なんだよ。そもそも俺様にだってお前は敬語を使わなきゃなんねぇんだぞ。」  「ひぃ……ごめんなさいさね……。」  リュウに睨まれてカメは小さく縮こまった。実際はとても臆病で弱いらしい。  「あ、あのぉ……。」  タニは状況についていけず、まごまごとその場をうろうろとしていた。  「おら、カメ、タニが困ってんだろうが。さっさと教えてやれ。」  リュウはカメを小突くとカメはビシッとまた立ち直った。  「はい。ではまず竜宮に案内するさね!」  「……だから敬語を……。」  元に戻ったカメにリュウはため息をついたがもう何も言わなかった。いつもの事らしい。  「ではレッツゴーさね!」  カメはタニの手をそっと取るとそのまま突然走り出し、海へとダイブした。  「ええ!?」  急に海に飛び込んでいったカメになんだかわからずタニも叫びながら海に連れ込まれていった。  「ちょっ……お前な……。ちゃんと説明してからやれよ。」  ふと隣でリュウの声が聞こえた。  タニはいつの間にか瞑っていたらしい目を開いた。  「あ、あれ?」  タニは海の中にいた。しかし、泳いでいるというよりかは空を浮いている感覚に近かった。  カメに手を引かれ、知らぬ間にタニは優雅に海の中を下降していた。  「あ、ごめんね。びっくりした?こういうのは体験してもらうのが一番いいと思ったさね。」  海の中には明かりが灯っており、明かりは街灯のように等間隔で配置されていた。まるで道のようだ。カメはタニを連れてその明かりの道をスイスイと進んでいく。  その横にリュウがいた。  「お前……ただ説明できなかっただけだろ……。」  リュウは呆れた声を上げながらカメの横を優雅に泳いでいた。不思議と息は苦しくない。一体どういう仕組みの海なのかタニにはよくわからなかった。  しばらく進むと赤い鳥居が物理の法則などを丸無視した形で佇んでいた。重りもないのにまるで地面に建っているかのように微動だにしなかった。海底はまだ見えない。この海がどこまで深いのかよくわからないが明かりのおかげで暗くはない。しかし、下の方はまるでわからない。  「は、はーい、ここさね!この鳥居に名前と役柄を言うさね!さあ!」  カメは突然タニにやり方を振った。  「え……ええ?あ、あの……説明をしてください!」  タニは助けを求める顔でカメを見つめた。  「だから、名前と役柄を……。」  「アホ。お前はどんだけ口下手なんだよ。ああ、役柄はタニの場合は新神でいい。後は自分の名前をこの鳥居の前で言う。それだけだぜ。」  リュウがカメを再び小突くとタニにため息交じりに説明した。  「え……は、はいぃ!」  タニはなんだか緊張していた。とりあえず、鳥居の前で謎の返事をした。  「なにガチガチになってんだよ……。普通に言やあいいんだよ。普通にな。」  「は、はい……。」  リュウに言われ、タニは深呼吸をするとビシッと言い放った。  「新神の谷龍地神(たにりゅうちのかみ)です!よろしくお願いします!」  タニは律儀にお辞儀をすると棒のようにピンと体を伸ばした。  少し時間が経った。  「……ん?」  しばらくしてリュウが声を上げた。  「あれ?竜宮に飛べないさね?」  カメも反応しない鳥居を不思議そうに眺めた。  「え……?反応しないってどういう事ですか?私、本当は採用されていないんですか?」  タニは戸惑いと焦りで目に涙を浮かべしくしくと泣き始めた。  「うわっ!おい、泣くなってば……。あれ……おっかしいな……。これで反応して竜宮に飛ぶはずなのに……あ……。」  リュウはタニの頭を優しく撫でながらある事に気が付いた。  「ん?リュウ様どうしたさね?ああ、タニ様……泣かないで……。」  リュウを気にしつつカメは心配そうにタニの手を握った。  「ああ、思い出した!俺様、こいつを谷口(たにぐち)で登録したんだった。オーナーにも谷口って言っちまったわ。あははは!」  リュウは突然、爆笑しはじめた。  「だから谷口じゃないです!谷龍地です!」  タニはしくしく泣きながら叫んだ。  「リュウ様……ひどいさね……。管理がてきとうさね!これは天津様(オーナー)に報告するさね!」  カメはタニを優しく撫でながらリュウを睨みつけ、厳しく言い放った。  「う……。わ、悪かった。オーナーの罰則だけは受けたくねぇ……。後でハッキングして直しておくぜ。」  リュウはカメの言葉にしゅんと肩を落とした。  「影で直そうとしないでちゃんとオーナーにミスの報告をするさね!リュウ様はちょっとガサツすぎるさね!」  「お前、ちょっと言い過ぎだぜ……。色々とタニの手続きに追われててミスっちまっただけだろうが。……はあ、ああ、とにかく、今は谷口って言っておいてくれ。」  リュウはカメの頬をみょんと伸ばしながらタニに言った。  「たにぐち……。そんなあ……。……新神、谷口です……。」  タニは少し落ち込みながらあやまった名前を口にした。  すると、鳥居が白く光りだし、タニは鳥居に吸い込まれていった。  気が付くとタニはホテルのロビーのような所にいた。  ロビーには他の神は全くいなかったが龍神らしい神はちょろちょろと歩いていた。窓から外をちらりと見ると外は何やら遊園地のようになっている。けっこう賑わっているようで龍神ではない神々が列を作ってアトラクションに乗っているのが見えた。  「すげぇだろ。ここが竜宮だぜ。」  ふとリュウの声が隣から聞こえた。タニは窓から目を離して慌ててリュウの方を向いた。  「こ、ここが竜宮なんですか?」  「ああ、ここは竜宮のロビーだ。外は遊園地でこのロビーの上の階はバーチャルアトラクションで宿泊施設と宴会席も用意してあるんだぜ。遊びどころはいっぱいあるがお前は仕事だから遊んでいる暇はないぜ。」  リュウは得意げにふふんと笑うとタニを促して歩き出した。  「あ、あの……カメさんは?」  タニはカメがいない事に気が付いた。  「ああ、あいつは別の用事で呼ばれちまったからな。別れたぜ。本当は一緒にこの中を案内する予定だったんだが……まあ、あいつがいてもいなくてもどうせ説明にならねぇからいなくてもいいだろ。」  「そ、そうですか……。」  「おら、行くぜ。」  リュウ様が二階へ上がる階段へと歩き出したため、タニも慌てて追いかけた。  しかし、二階に行く前にタニの前を何者かが乱入してきた。  「わっ!」  「お!新神なんだナ!シャウ!」  タニの前に現れたのはシルクハットを被ったハイカラ雰囲気の青年だった。ワイシャツと着物に袴だ。目が悪いのかなんなのかわからないが眼鏡をしている。  青年は端正な顔立ちに似合わない言葉遣いでタニに話しかけてきた。  「竜宮はいつ来ても楽しいんだナ!シャシャシャシャーウ!」  「あ……えっと……お、お客様……?ですか?」  タニが困っていると呆れ顔のリュウがタニと青年の間に割り込んできた。  「シャウ、邪魔だ。今は頼むから俺様の邪魔だけはすんな。」  「お!リュウなんだナ!シャウはお客様なんだナ!その態度はダメなんだナ!シャウ!」  リュウにシャウと呼ばれていた男は手に持ったステッキで謎のダンスをしながら楽しそうにリュウに詰め寄った。  「うわっ!こっち来んな!来んなっつってんだろ!お前は確かにお得意様だがめんどくせぇんだよ。」  「ひどいんだナ!電気びりびりやってお仕置きするんだナ!シャーウ!」  シャウと呼ばれた青年はビリビリと体中から火花を散らし始めた。  「お、おわっ!や、やめろ!ここには新神もいるんだ!」  リュウが慌ててシャウを止める。シャウはちらりとタニを見るとにこやかに笑い、大きく頷いた。  「うん。さすがに女の子を丸焦げにするのはかわいそうなんだナ。巻き込んじゃう所だったんだナ。ごめんなんだナ……。シャウ!」  シャウは目に涙を浮かべながらビクビクしているタニをそっと撫でた。  「あわ……あわわ……。」  タニはなんだか目が回りそうだった。いきなり高電圧の放電を食らう所だったのだ。パニックになるのも無理はない。  「わりぃな……こいつは加茂別雷神(かもわけいかづちのかみ)、雷神だ。神格はかなり高いはずだがオチャラケなんだ。俺様とはまあ、腐れ縁で『シャウシャウ』うるせぇから俺様はシャウって呼んでる。」  気絶寸前のタニを元に戻しながらリュウはシャウの紹介をした。  「シャウ様~りゅう~ぐ~じょ~へようこそ~……。」  タニは目を回しながらシャウにとりあえず挨拶をした。  「シャウ!ああ、ごめんなんだナ!シャウのせいなんだナ!」  シャウはオドオドとタニの様子を窺いながら謎のダンスを始めた。  「ええい!邪魔だ!向こうへ行ってろ!……じゃねぇな……お客様、大変申し訳ありませんが質問等がございましたらあちらのサービスカウンターでお願いいたします。」  リュウは後半シャウに丁寧な言葉遣いでやんわり向こうへ行けと言っていた。  「……リュウが気持ち悪いんだナ。よそよそしくなってなんだか冷たいんだナ……。シャウ!」  シャウはしゅんとした顔で下を向いた。  「……おめぇはどっちがいいんだよ……。さっきと言ってる事逆じゃねぇか……。」  「ま、いいんだナ!じゃあ、向こうで遊んでくるんだナ!バイバーイ!シャーウ!」  リュウが頭を抱えているとシャウは突然、元気になりさっさと外へ飛び出していった。  「あー……なんなんだよ……めんどくせぇやつ……。おい、タニ、平気かよ?」  「あ……はい。あー……びっくりしました……。」  リュウが揺すってタニを元に戻す。  「いきなりすげぇのに当たったな。あいつはいつもああだがワリィやつじゃねぇんだ。それからあいつ程度でビビってちゃあ駄目だぜ。ここ、竜宮は高天原四大勢力と月と太陽の姫君もよく宴会などで遊びに来る。ものすげぇ威圧を発しているが本神達は普通だ。そのうち、お目にかかる事もあると思うがビビんなよ。」  「は、はぃい!」  タニはまたビシッと背筋を伸ばして勢いよく返事をした。  「お前の返事の仕方ってなんでそんなにおもしれぇんだよ……。よし、じゃあ、まずは竜宮の案内から行くぜ。」  「はいぃ!」  リュウはタニの返事にケラケラと笑いながら竜宮の案内を始めた。  ……なんだか曲者が多そう……。やっていけるかなあ……。  タニは沢山の不安を抱えながら恐る恐るリュウについていった。
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