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2 桃太郎の子孫 吉備津桃子
小鬼菊子は、興味を持って話しかけてくるクラスメイトに生返事だった。菊子の目は、吉備津桃子に釘付けなのだ。
桃子もその視線が気になって菊子に話しかける。
「小鬼さん……ええと、菊子さんだったよね」
「はい、菊とよんでください」
「わかった菊ちゃん。僕の事は、桃でいいよ」
「はい、桃さん」
「さっき、桃太郎の子孫を捜しているみたいだったけど。僕は、爺ちゃんから、うちは桃太郎の系譜を継いでいると聞かされているんだ。でもなあ、何の証拠もないしね。都市伝説みたいなものかな。菊ちゃんは、何で桃太郎の子孫を捜してるんだ?」
「そ、それは、ちょっと学校ではお話しできないので……」
「そっか。わかった。じゃあ学校が終わったら僕の家で話そう」
「ええ! いいんですか。喜んでお邪魔します!」
放課後、桃子と菊子は山沿いの田舎道を並んで歩く。体格のいい桃子と小柄な菊子が並ぶと姉妹のように見える。西讃岐山高校は、勝芝山という小高い山のふもとにある。桃子の家も学校から歩いて20分ほどの所にあった。すこし、山間になるが、最近開発されて住宅が増えてきた。
桃子の家は、旧家であった。歩きながら桃子は、スマホを取り出し家に連絡する。
「ああ、婆ちゃん。今から友だちを連れて行くから。あと10分ぐらいで帰る」
「え、え、友だち? 桃さんあたしの事を、友だちと言ってくれるのですか? か、感激です」
「同じクラスじゃないか。もう友だちだよ。でも、こんな時期に転校なんて、何か訳があるんだね」
「はい……。実は、桃さんを捜して、転校を繰り返していたんです。やっと、やっと桃太郎の子孫の桃さんを見つけた……」
菊子は、涙をボロボロと流して泣き出す。桃子は、そんな菊子の肩を優しくなでた。
桃子の家は、旧家らしい長屋門だった。菊子は、旧家を見慣れているのか特に戸惑うことなく桃子について行く。
「ただいまー」
桃子は、玄関で靴を脱ぎ揃えて、応接間に菊子を案内した。座敷間で、すでに座布団が敷かれている。
2人が座ると桃子の祖母が、割烹着姿で現れた。
「お帰り桃。あら、その子がお友だちかい?」
「そう、小鬼菊子さん。今日転校して来たんだよ」
「こ、小鬼菊子です。お邪魔いたします」
菊子は土下座に近いぐらい頭を下げる。
「まあ、まあ、ゆっくりしておくれ、小鬼さん。お茶でも持ってこようかね」
「うん。婆ちゃんありがとう。菊ちゃんもリラックスしなよ」
「はい」
座布団に座り直す菊子。
「で、僕を捜していたってどういうこと?」
「あの……。その前にこれを見て下さい」
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