6 Ready!

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6 Ready!

 翌日、午前9時。  空は晴れ渡り、海も()いでいた。サヌキポートの港には瀬戸内海の、島々に渡る船が出入りしている。  港の待合室で、左六女(さろめ)はベンチに座り、女花島(めばなじま)行の船を待っていた。アポロキャップに、スタジアムジャンパー、ジーパンに靴はスニーカーと、アクティブなコーデだ。  もうすぐ、船の乗船時刻。左六女は、ショルダーバッグを肩に掛けながら、周りを見渡す。菊子(きくこ)はどこだ……。 「あのーおはようございます」  (ひか)えめな声。でも確かに菊子の声だ。左六女が振り向くと、ベンチの背もたれの陰から、菊子が顔をのぞかせた。 「おはよう、菊ちゃん。なんだよこっそりと。あれ、その恰好」  菊子は、(つの)をキツネ色のケモミミカチューシャで隠し、黄土色のダウンジャケットを着ていた。ボトムスは、ハーフパンツ、黒のハイソックスに、靴は左六女と同じくスニーカーだ。 「ケモミミ! 可愛いよ。いい、いい絶対いい」 「そ、そうですか……。何とか変装をしなきゃと思ったんですけど……」 「いや、それでいいって。変に意識しすぎると、地味にしてもかえって不審がられるからね。自然に可愛い感じがいいよ」 「あ、ありがとうございます」  照れながらポリポリと頭をかく菊子だが、ケモミミをいじったりして満更(まんざら)でもないようだった。 「じゃあ行こうか!」 「はい!」  2人は、どちらともなく手をつなぐ。  船着き場には、もうすでに客が乗船を始めていた。  女花島は、サヌキポートから、目の前に見えている一番近い島だ。乗用車が、12台ほど乗る小型のフェリーで、島まで20分ほどかかる。今日は、土曜日で天気も晴れているので、観光客も30人位見られた。午後からはもっと増えるのだろう。  船は、時間通りに女花島に着いた。2人は観光客の集団にまぎれて、島の観光案内センターに向かう。ここは、ちょっとした休憩所にもなっている。自販機で缶コーヒーを買って、休憩所のイスに座る。 「ここは、島の表玄関だよね。ここに大型のヨットで、乗り付けるのはちょっと目立つね。人家もあるし」  港の様子を見た左六女が、缶コーヒーの香りを嗅いで菊子を見た。 「はい。ここは島の中で、一番人が多い所です。フェリーの最終便が、ここに着くのは19: 00です。その後は、船は来ませんが、やっぱり島の人が住んでますからね。この港は、人の目につくところです」 「そっか。あんまり派手なことをしてると、島民にも敵にも見つかるよね。でもさあ、地図アプリで調べると、この港のちょうど反対側に、小さな漁港があるみたいなんだけど」  左六女は、地図を表示したタブレットを、机の上に置いた。 「はい。あります。そこは、船着き場もあります。人家もありますが、ここよりは、はるかに少ないです」 「よし、ヨットはその漁港に着けよう。じゃあ次は鬼の洞窟に行ってみようか」 「観光用洞窟に行くなら、バスで行った方いいです。ちょっと山の中腹(ちゅうふく)にあるので、歩くと(のぼ)り道で、30分から40分位かかります。でも、バスなら10分です」 「歩きで30分から40分は、きついよね。作戦時は、バスなんて使えないし。何とか方法を考えないと……。まあ、とりあえず今は偵察だから、手っ取り早く、バスに乗って行こう」  2人は、バスに乗って、島の観光地である『鬼ヶ島大洞窟』に向かった。
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