2 桃太郎の子孫 吉備津桃子

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 菊子(きくこ)は、目と耳の間に垂れ下がっているツインテールをほどく。黒髪が、ストレートになると、髪を結んでいたところに(つの)が2本。 「それって、角だよね。小鬼って名前も変わってるなと思ったけど、ひょっとして、菊ちゃんて本当に鬼なの?」  桃子(ももこ)はざっくばらんに聞いた。 「はい。あたしは鬼の子孫です。鬼ヶ島(おにがしま)から来ました」 「え、鬼ヶ島って、瀬戸内海(せとないかい)にある女花島(めばなじま)のこと?」 「そうです。あそこには、鬼族がいまだに住んでいるんです」 「じゃあ、鬼族から見たら僕なんか(かたき)なんじゃない? 僕のご先祖は、鬼退治なんてやっちゃったみたいだし」 「確かに、桃太郎さんは鬼ヶ島に来ました。あたしたちのご先祖はコテンパンにやられましたが、それは仕方のないことです。人間を(おど)して財宝を奪ったりしたんですから。でも、決して弱い女性や子ども、老人は、脅かしたり襲ったりしませんでした。本来、鬼ヶ島の鬼は、民を(しいた)げる権力者から、財宝をいただいていたのです。もちろん、人を殺したり食べたりなんてことはしなかった」 「へえー。プライドがあったのかな」 「はい。鬼が悪魔のように恐れられるようになったのは、が現れてからです」 「あいつ?」 「はい。、『天地人(てんちじん)虚無大師(きょむだいし)』です」 「誰、それ?」 「天地人虚無大師は、まったく正体不明で、謎の人物なんです。あいつの望みは一つだけ。人間の怒り、憎しみ、恐怖、恨み、疑いなどの感情を広めて、人や鬼を争わせること。そして、最後は人間も鬼族も滅亡させたいのです。それほど、生きとし生けるものに対する恨みを持っている。それが天地人虚無大師です。あたしたちは、虚無大師と呼んでいます」 「そんなやつが現れて、鬼はこき使われたんだ」 「はい。虚無大師に逆らうと、無限の闇に落とされるのです。そうやって鬼を脅して、良い人間も襲わせたり、財宝を奪わせたりしました。ここまでくると桃太郎さんも、鬼退治に立たざるを得なかったのだと思います」 「まあ、いくら虚無大師に脅されたと言えども、人間を襲う鬼を放ってはおけないよね。桃太郎さんの辛い所だね。で、ご先祖は、猿・犬・雉を家来にして鬼ヶ島に行ったんだ」
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