22人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい。桃太郎さんは、それはそれは強かったそうです。虚無大師が諸悪の根源だと分かっていた桃太郎さんは、鬼退治は控えめにして、虚無大師に戦いを挑みました」
「ふんふん。それで?」
「激しい戦いの末、虚無大師は無限の闇に逃げ去ったと言われています」
「逃げた? 無限の闇に? 虚無大師はそこから来たのか」
「そうかもしれません。でもあいつの事は何もわからないのです。ただ、悪いやつであることは確かです」
「で、鬼の子孫の菊ちゃんは、何で桃太郎の子孫を捜しにきたの……。あ! ひょっとして、あいつが帰ってきたとか?」
「はい。そうなんです。しかも、桃太郎さんが鬼のために残しておいてくれた財宝をどこかへ持ち出そうとしているんです」
「え、何? その鬼のために残して行った財宝って」
「桃太郎さんは、鬼ヶ島にあった財宝の半分を持ち帰って、里の民のために役立てたのですが、半分は鬼族の生活のために残して帰ったのです。もう人里に出てこないという事を条件に」
「そっか、そういう言い伝えがあるんだね」
「これは、言い伝えですが、真実です。現に財宝はまだあるのですから。その財宝が、虚無大師に持ち去られようとしているのです。もちろん鬼族も戦いましたが、虚無大師にはかなわなかった。無限の闇に落とされた鬼もいました」
「そんなに強いのか」
「はい。外国の怪物も連れてきているのです」
「それで、桃太郎の子孫に助けを求めてきたってわけか」
「そうです! 桃太郎の子孫の方で今一番お強いのはどなたですか?」
「そうだなあ……。爺ちゃんは、無理できないし。父さんと母さんは今、外国で仕事をしているんだ。急には帰れないだろうな。兄弟姉妹はいないし。あと残っているのは、婆ちゃんか?」
最初のコメントを投稿しよう!