2 桃太郎の子孫 吉備津桃子

4/4
前へ
/63ページ
次へ
 突然ふすまが開いて、 「桃! お前が行くべし!」  桃子の祖母が、お盆にお茶を乗せ、立っていた。  「婆ちゃん、今の話聞いてたな。まあ、いいけど」  お茶を菊子に進めながら、祖母が語る。 「今の小鬼さんの話、婆ちゃんも小さい時に聞いたことがある。本当の事じゃろう。桃よ、今小鬼さんは助けを()うておるのじゃ。()を見てせざるは勇無(ゆうな)きなりじゃ。吉備津家の者には桃太郎大人(たいじん)の血が流れておる。正義を(たっと)び、弱きを助け悪を懲らしめる、(じん)の心じゃ。そして、今まで言わなんだが、桃、お前には桃太郎大人の秘力がある」 「うわ。婆ちゃん、いきなり語ったけど、僕にできるかなあ。婆ちゃんは、僕の事心配じゃないの?」  祖母と菊子の顔を見ながら、腕を組む桃子。 「何を言っとるか! 婆ちゃんは、桃を信じとる。桃は何かを成し遂げることのできる子だと」  目を潤ませて、その言葉にうなずく菊子。 「そっか、わかった。やるよ! 虚無大師とか桃太郎の秘力とかはよくわからないけど、とにかく財宝を奪われないようにして、鬼族を助ければいいんだね」 「ありがとうございます! よろしくお願いいたします」  頭の角を畳にこすりつけて礼を言う菊子だった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加