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桃子の家の応接室。
桃子の前には、菊子と左六女が座っている。左六女は、しきりに菊子の角を見ていた。
「菊ちゃん、こちらは、僕の幼稚園からの友人で桜森左六女だ」
桃子が左六女を紹介すると、菊子が頭を下げて、
「小鬼菊子です。どうぞよろしくお願いします」
と挨拶をする。
「小鬼さんって、礼儀正しいね。左六女って変わった名前でしょ。これはね、身重の母さんが、安産祈願に猿女神社に詣でた時のこと。参道の左側の桜並木の六本目の所で、産気づいたの。桜並木の左側、六本目の女の子というところから左・六・女って名付けたんだって。それと猿女神社の猿女にも掛けてあるんだって。左六女って呼んでね」
「は、はい。あたしのことは菊と呼んでください」
「じゃあ、作戦会議だ」
桃子に促されて、今までのいきさつを話す菊子。左六女はそれを聞いて、タブレットパソコン『スーパーモンキー』にペン入力でメモを取る。
菊子が話し終えると左六女は、質問する。
「うん。だいたいのことは分かった。菊ちゃんの望みは、お宝を守るのと、虚無大師を追っ払うという事だよね」
「はい」
「じゃあ質問するけど、警察とかには連絡しないの?」
「私たちは、鬼族です。人間の前に不用意に姿を現すことはできません。それに、財宝やら虚無大師やらの話をしても普通の人はまともに聞いてくれないでしょう」
「そうだな。僕たちは、普通の人じゃないからね。なあ、左六女!」
笑いながら、桃子が左六女の肩をつかむ。
「いやいやいや、桃さんと左六女さんが、変な人って意味じゃないです!」
両掌を振る菊子だった。
「わかってるって。桃は、変な人かもしれないが、私は特別な人だからね」
わざとらしく顎を出して、鼻息を荒くする左六女。
「ああ、それから質問の続きだけど、その財宝って、鬼ヶ島にあるんだよね。鬼ヶ島って、女花島のことでしょ?」
左六女は、タブレットを見ながら続けて訪ねる。
「そうです。今は、瀬戸内海の観光名所となっている女花島です。財宝は、女花島の洞窟にあります」
「え! あの洞窟も、鬼の像とかあって観光名所なってる所じゃん。観光客が来るところに財宝なんてあるの?」
「確かに洞窟は、鬼ヶ島の鬼の住処だったと言われて、観光地になっていますが、秘密の通路があるのです。その通路は、一見行き止まり見えますが、その奥は、私たち鬼族しか通れない迷路となっているんです」
「へえ。そんなところがあるんだ。でさあ、財宝って何?」
「主に金、銀の大粒です。あとは、宝剣だったり、真珠やサンゴの宝珠です」
「ふん、まあ、昔ながらの財宝ってとこかな。で、どのくらいあるの?」
「どのくらい? そうですねえ……軽トラック一台分ぐらいかな」
「おお、菊ちゃんわかりやすいよ。そうか、軽トラ一台分か……」
宙を見ながら左六女は、再びタブレットに情報を入力する。
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