3 桜森左六女の『スーパーモンキー』

3/3
前へ
/63ページ
次へ
「財宝を奪い取らんとしている虚無大師(きょむだいし)は、財宝のありかがわかっているのかな?」  左六女(さろめ)は、質問を続ける。 「はい、もう迷路を通って『財宝の間』を見つけています」  答える菊子(きくこ)。 「何で財宝を取って行かないのさ。外国の怪物もつれてきてんでしょ。突入して奪わないの?」 「あの、一度は、勇猛な鬼の一族が虚無大師と戦って、多大な犠牲者をだしながらも、あいつらを洞窟から追い出しました」 「鬼族もがんばったんだ。で、それからもう来なくなったの?」 「今は、『財宝の間』の中でお(かしら)をかけて、敵が入ってこれなくしているのですが……。いつ封印が破られるか……。」 「封印が破られた時、また一気におそってくるんだね」  桃子(ももこ)が、腕を組む。 「はい。おそらく。そうなったら、もう鬼族だけでは対抗できません」  菊子が、両拳(りょうこぶし)を握る 「事は急ぐんだ……」  桃子は、左六女の顔を見る。 「虚無大師と外国の怪物は、今も財宝の間に入ろうとしてるんだよね?」  左六女の問いに、うなずく菊子。 「左六女、どうする? 僕らは、一気に戦いを挑んだ方がいいのかな……」 「圧倒的にこちらが、強いならそれもありだけどね。こっちは、桃と私と鬼の一族だよね。そんで鬼族は、一回戦って手傷を()ってるし。こりゃあ、きびしいよね」 「あの、もう他に、お仲間はいないのですか? 桃太郎さんには、猿と犬と雉がいましたよね」  菊子がおずおずと桃子に聞いた。 「それだよ、菊ちゃん。桃には仲間が必要だ。さしずめ猿は、私だね。このタブレットが『スーパーモンキー』って名前だし」 「友だちはいるけど……。危険な目に()わすわけには、いかないしなあ……」  桃子は、頭を掻きながら、首を左右に振る。 「まあ、いいよ。仲間の(けん)は、作戦をたててから、私が何とかする。桃は、(なさ)けがあり過ぎだ。こういうのは交渉だから私に(まか)せて。で、菊ちゃん、その『財宝の間』の封印は、あと、どのくらい耐えられるの?」 「分かりません……。けど、『財宝の間』にいる、お(かしら)に聞いてみれば、わかるかも知れません」 「ええ! お(かしら)さんと連絡がとれるの? どうするのさ。まさかスマホとか?」 「いいえ、この近くにある『縁象院(えんしょういん)』という小さなお寺に地獄の閻魔様(えんまさま)の木造があるのですが……」 「ああ、知ってる。舌を出してる閻魔像だよね。それがどうしたの」 「はい、その閻魔像の横に『浄玻璃(じょうはり)の鏡』という大きな丸い鏡があります。その鏡を通して『財宝の間』にいるお頭と、テレビ電話のような通信ができるのです」 「ふええ! 知らんかったよ。桃は知ってた? さすが鬼族だ。閻魔様とは仲がいいんだね。じゃあ、洞窟関係の情報収集は菊ちゃんにお願いするよ」 「わかりました!」  真剣な顔で、うなずく菊子だった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加