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「財宝を奪い取らんとしている虚無大師は、財宝のありかがわかっているのかな?」
左六女は、質問を続ける。
「はい、もう迷路を通って『財宝の間』を見つけています」
答える菊子。
「何で財宝を取って行かないのさ。外国の怪物もつれてきてんでしょ。突入して奪わないの?」
「あの、一度は、勇猛な鬼の一族が虚無大師と戦って、多大な犠牲者をだしながらも、あいつらを洞窟から追い出しました」
「鬼族もがんばったんだ。で、それからもう来なくなったの?」
「今は、『財宝の間』の中でお頭が封印の術をかけて、敵が入ってこれなくしているのですが……。いつ封印が破られるか……。」
「封印が破られた時、また一気におそってくるんだね」
桃子が、腕を組む。
「はい。おそらく。そうなったら、もう鬼族だけでは対抗できません」
菊子が、両拳を握る
「事は急ぐんだ……」
桃子は、左六女の顔を見る。
「虚無大師と外国の怪物は、今も財宝の間に入ろうとしてるんだよね?」
左六女の問いに、うなずく菊子。
「左六女、どうする? 僕らは、一気に戦いを挑んだ方がいいのかな……」
「圧倒的にこちらが、強いならそれもありだけどね。こっちは、桃と私と鬼の一族だよね。そんで鬼族は、一回戦って手傷を負ってるし。こりゃあ、きびしいよね」
「あの、もう他に、お仲間はいないのですか? 桃太郎さんには、猿と犬と雉がいましたよね」
菊子がおずおずと桃子に聞いた。
「それだよ、菊ちゃん。桃には仲間が必要だ。さしずめ猿は、私だね。このタブレットが『スーパーモンキー』って名前だし」
「友だちはいるけど……。危険な目に遭わすわけには、いかないしなあ……」
桃子は、頭を掻きながら、首を左右に振る。
「まあ、いいよ。仲間の件は、作戦をたててから、私が何とかする。桃は、情けがあり過ぎだ。こういうのは交渉だから私に任せて。で、菊ちゃん、その『財宝の間』の封印は、あと、どのくらい耐えられるの?」
「分かりません……。けど、『財宝の間』にいる、お頭に聞いてみれば、わかるかも知れません」
「ええ! お頭さんと連絡がとれるの? どうするのさ。まさかスマホとか?」
「いいえ、この近くにある『縁象院』という小さなお寺に地獄の閻魔様の木造があるのですが……」
「ああ、知ってる。舌を出してる閻魔像だよね。それがどうしたの」
「はい、その閻魔像の横に『浄玻璃の鏡』という大きな丸い鏡があります。その鏡を通して『財宝の間』にいるお頭と、テレビ電話のような通信ができるのです」
「ふええ! 知らんかったよ。桃は知ってた? さすが鬼族だ。閻魔様とは仲がいいんだね。じゃあ、洞窟関係の情報収集は菊ちゃんにお願いするよ」
「わかりました!」
真剣な顔で、うなずく菊子だった。
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