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なるほど、だからわたしを訪ねてきたのかと納得した。それに先程の「都合がいい」という発言にも合点がいく。
……でも被検体なんて経験したことないし、なんだかちょっと怖いな。どうしよう……?
訪問目的と打診内容は理解したものの、よく知りもしない人の実験に付き合うのは躊躇してしまう。わたしは答えに窮して口ごもった。
だが、そんなわたしの戸惑いは彼の次の言葉によって一瞬で吹き飛んだ
「もちろん謝礼は支払う」
……謝礼!!!
なんと被験体を引き受ければお金を頂けるという。治癒魔法を使えなくなったわたしなんて役立たずなのに。
ふいに先程部屋で眺めていた麻袋が脳裏をよぎる。
貯蓄が日に日に心許なくなっている中、今まさにお金を稼ぐためになんとかしなければと思い悩んでいたところだ。
相手が貴族様だという点は気掛かりではあるが、なりふり構っている場合ではないだろう。
「……分かりました! わたしでお役に立つのでしたら、魔法師団長様のされる研究において、実験の被検体をお引き受けいたします」
「交渉成立だな。ではお前にはこの領地内で私が住居を用意する。そこに住まいを移してくれ」
「住む所をご用意してくださるんですか⁉︎」
「実験場所としても使用するからな。研究に関わるものは私が負担するのが妥当だ」
なんと思いがけず住む場所まで手に入ってしまった。
このままだとこの宿屋を利用し続けるのも厳しいと思っていた手前、正直とてもありがたい。
だが、そこでわたしははたと気づく。
「あの、この領地でとおっしゃいましたが、魔法師団長様は普段は王都にいらっしゃるのですよね? 実験は年に数回ということでしょうか?」
「いや、最低週に一回だ」
「えっ? でも王都からここまで馬車で七日はかかりますが……?」
「問題ない。私は瞬時移動魔法が使えるからすぐに行き来できる」
なんてことないようにサラリと言われたが、瞬時移動魔法といえば、かなり難易度の高い魔法のはずだ。膨大な魔力と技術が必要になると聞いたことがある。
……さ、さすがエリート魔法師様!
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