夜、月まで翔けあがるためには

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 月が白く明るさを増していた晩だった。  濃い灰色のローブを纏う人々の中から、オレは進み出る。純金のヘルメットには、ルビーが埋め込まれた龍の紋章。アーマーは彫刻が施された金の板でできており、その緻密な細工が月の白い光を捉えては反射した。腕も、脚も、腰に佩いた剣や靴でさえ、オレの死に目を看取るためにごてごてと豪奢に飾り立てられていた。  人々を背にしたオレは、崖に長く張り出すように作られた高台へ歩みを進めていく。広大な奈落に、歩いていく。高台の端まで辿り着いたオレは身体ごと振り返った。灰色の人々にはオレが知っている人が何人もいて、その中には親すら含まれていたが、オレが別れを惜しむような温かい気持ちになる相手は一人もいなかった。  だからオレは、そのまま背中に倒れこむようにして、高台の床を蹴った。奈落へ……魔界へと繋がると言われる暗黒のダンジョンの中へ。  落ちてゆく。落ちてゆく。天に変わらず見え続ける、月の純白の光がきれいだった。
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