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「あなたを消した理由、それは仕方なかったんだ…」  朝、夢で目が醒めるといつもあなたの夢で目が醒めてしまう。あなたとの楽しかった日々の思い出。はじめて出会った時から始まり初デートや朝焼けで一緒に飲んだ珈琲などが、まるで映画の様に繰り返される。  今年の冬に同棲をはじめてから、僕は朝あなたとの思い出の場所、アパートのそばの海岸を一緒に毎日散歩する。春が来て夏が過ぎ秋がいつの間にか近づいてる。海を見ていると涙が溢れる。「僕はあなたを愛していたのに。」 「仕方なかったんだ。」 父がやっている家業が傾いていた。 先代から付き合いがあり資金援助をしてくれている資産家。その娘とは 同級生だった。 不渡りが出そうになった時に父に呼ばれ資金援助の工面に資産家宅に訪れた。  「よく来たね。待ってたよ。電話の件大丈夫だから。」御宅を訪問すると 開口1番資産家が口を開いた。 「ところで君…」突然僕に話が振られた。「ざっくばらんに話をしたいんだが うちの娘を嫁として貰ってくれないか。本人もまんざらじゃないそうだ。」  「えっ。」青天の霹靂、僕は動揺した。だいたい嫁を…犬猫じゃあるまいし、僕はあなたの事が頭に浮かんだ。  「どうだろう。」念を押された。  「はい。」話を聞いてますというつもりで返事をした。  「そうか。よかった。我が家と君の家もますます近づく。孫娘も喜ぶ。」  しまった…断れない。ここで下手に断れば資金援助どころではなくなる。 父をはじめ家族や、子供の頃からいる 家族の様な従業員の顔が目に浮かぶ。どうしよう…頭の中がぐるぐるして 船酔いの様に気持ち悪くなった。  帰り道、父が一言。 「これからのお前の為に、身の回りは、ちり一つ残さず綺麗にしておけよ。今受けている大きな事業も資金援助で軌道に乗れる。お前は将来の次期社長だからな。」  
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