わたしはもうりんごを剥かない

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 ご飯を済ませた後、私は一人台所に立っていた。右手には包丁、左手にはりんごを持って。  小学校二年生からずっと続けてきたおかげか、皮剥きの腕もかなり上達したと思う。  剥き終わったりんごを皿に乗せて、私はそれを父の席へ置いて自室へと戻った。  それから数時間後。    父が帰ってきたのが玄関の扉を開けた音で分かった。  そこから数分経って、階段を上がって来る音が響き私の部屋の前で止まった。  コンコン、と少し控えめなノック音がする。 「穂乃果、ちょっといいか」 「……何?」  私が返事をすると扉が開き、父が再度声をかける。 「話をしよう」  私は父の方を振り返ると小さく頷いた。
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