ノアール

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キッチンで皿を洗うサンタマリアについて行き、ハリネズミは顔を覗く様に話し掛ける。 “マリア、嫌な夢でも見た?” サンタマリアは、理由もなく相手に怒鳴ったりはしないのを、ハリネズミには分かっている。 外から帰った時だけでなく、悪夢を見た時も、スケッチブックに絵を描く事がある事も分かっている。 “マリアは理由もなく、相手に怒鳴ったり、追い返したりしないの、ぼく知ってるよ” 洗った皿をカゴに戻したサンタマリアは、ハリネズミを見る。 「布団、掛けてくれたの…友翔さんだったんだなね?」 “うん、ぼくじゃ、マリアに布団掛けられないから” 「その時に見たの? 俺のイラスト」 “そうだと思うよ、その時しか見る時ないし” 「友翔さん……俺のイラスト、気に入ってるって事?」 “そうだよ、マリアの絵、凄いって褒めてたよ。 マリアも分かってるんでしょ?友翔さんの気持ち” 「あんな絵の何処が良いんだろう」 “理屈じゃないよ、絵って、見た瞬間に思うんだよ。 『素敵だ』って。 だからマリア、あの絵は捨てちゃダメだよ” 「でもあの絵は──」 “あの絵はマリアの何を表してるの? もしかして、無くした過去と関係あるの?” キッチンからリビングへと歩き出し、ハリネズミもついて行く。 「頭に浮かんだ物を描いてるだけだから」 “見返してみない? 何かんかるかもしれないよ?” 足を止めたサンタマリアに、ハリネズミも止まる。 “怖い?知りたくない? でも、マリアは自分の過去知らないんだよね? 『サンタマリア』って名前の事も分かるかも”
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