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黒い酸性雨を浴びてしまうと、様々な障碍を引き起こす。
この街では感染症に因る体の異常を【障碍】と呼ぶ。
【色覚異常】
【言語障碍】
【記憶障碍】などを引き起こし、更に感染が進むとアレルギーや発疹、痒みや痛み、嘔吐や下痢を引き起こし、しまいには皮膚が爛れ、死に至る。
サンタマリアも色覚異常障碍と記憶障碍を持っているが、2つ以上の障碍を持って生きているのは珍しい。
住人の中には稀に何故か光を求めて街を徘徊する事が有り、【長時間光を見続けると死に至る】とも言われている。
この『光を求める症状』をイカロスと呼ぶ。
ギリシャのイカロスになぞらえて。
(【勇気を1つともにして】より。)
実はサンタマリアもその1人だが、彼は死ぬ事無く生きている。
サンタマリアはいつもの様に、時折外に出て来ては、街中を歩く。
白い本は服の中に隠して、黒く大きな傘を差している男性。
極端に視力が弱く、光にも弱い。
また、全てが白黒に見えてしまう為、傘が欠かせない。
そんな事など知らない住人には異常に見えるかもしれないが、これがサンタマリアの『日常』だ。
肩には小さなハリネズミが乗っている。
〝ねぇ、マリア。
今日は何処に行くの?〟
ハリネズミはサンタマリアを縮めて【マリア】と呼んでいる。
「宛はない。
ただ、ずっと箱庭シェルターに居るのも退屈だから」
サンタマリアはいつも黒く大きな傘を差しているが、この傘は特殊な作りで、黒い酸性雨や光を通さない特殊な傘だ。
〝ぼく、キミのそう言うとこ好きだよ。〟
このハリネズミは、元はペットだったが飼い主に捨てられ、たまたま出会ったサンタマリアを気に入り着いてきては懐いている。
しかし名前はない。
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