エピローグ①

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エピローグ①

魔界の檻に閉じこめられていた女神は精神的に弱って、ほんらいの力を発揮できず。 それでも「命に代えても」と神パワーをそそぎこみ、勇者の命をとりとめてくれた。 その容体が安定してから、マグマの水晶を使って火口を空っぽにし、女神を通して格闘家に連絡。 「すぐに救出しにいく」と応じてくれ、その手配をする間に状況報告を。 まずは白魔導師について。 首にナイフを刺され、目を開けながら失神していたような勇者。 俺が火口に跳びこんでから、すこしして、全身が輝きだして。 無敵状態になり覚醒すると、白魔導師にしがみつき、共に火口に身を投げたという。 おそらく、マグマに落ちてすぐに、白魔導師と首に刺さったナイフは溶けてしまい、無敵オーラに包まれた勇者だけが俺のもとに下りてきたのだろう。 そして、世界の現状について。 どの国や地域も、魔物軍勢の猛攻をしのぐのに精一杯。 その守りが崩されそうになったとき、魔物軍勢が混乱に陥り、散り散りになって退却。 いまだ魔物軍勢は統率をとりもどせず、自分の陣地でもたついている模様。 偵察によると、指揮をとるヤツの命令を、下っ端が聞かなくなり、文句を垂れて暴れるは、脱走するは、果てには殺しあうは、内輪もめがひどいとか。 それまで「魔王万歳!」と狂信的に団結していたのが、嘘のように。 ちなみに、勇者に変装してオトリになったエントの王と兵たちは、撤退しだした魔物軍勢を、容赦なく追撃して全滅させたとか。 なので「手の空いた兵と能力者が、今、火口に向かっているから、手を貸してくれるだろう」と。 いい報告がもたされて、女神と顔を見合わせ、ほっとした間もなく、エントの援軍によって俺たちは魔界から脱出。 で、「めでたしめでたし」というわけではなく。 絶対安静に勇者を寝かしつけ、俺らと女神、さらに説得した神たちと結託し、魔物軍勢との交渉に当たることに。 戦いでなく、交渉でケリをつけたようと考えたのは、魔王のひ孫の情報によってだ。 魔王の血筋のくせに、今や、すっかり人に媚びへつらい追従し、魔界の機密情報も垂れ流し。 魔物軍勢が急にぼろぼろになった理由についても、こころよく教えてくれた。 「魔王万歳!」と盲目的に信仰するように、魔物には揺るぎない忠誠心があるかに見えたが、実態はちがうらしかった。 もともと魔物は、人が腐ったようなナレノハテてだから、とんでもなく気分屋だし、ワガママ。 たとえ相手が権力者だろうと、強者だろうと、なびかないし、躾や調教をしても脅しても、云うことをきかない。 そこで、魔王は美貌で誘惑、魔力によって洗脳して操ることに。 心からの忠誠心を求めず、「魔王万歳!」と熱狂する魔物軍勢を形だけでも整えたという。 そりゃあ、魔王が死に、誘惑と洗脳から解放されたとたん「世界征服?めんどくせ」「魔王万歳なんて馬鹿らし!」と不良魔物たちは、ちらばるというもの。 大多数が、そうして反抗したり離脱したり。 指揮をとる魔物も魔物で、こちらはホンモノで、極端に「魔王万歳!」と号泣するほど心酔していたが、逆に魔王死亡でがっくりきたようで。 やる気がないのと、やる気があるのと、どちらでもなく流されただけのと、まあ、全体的にそもそも、さほど人間憎悪はなく、世界征服に躍起になってなかったらしい。 魔王のひ孫の仲介で、交渉に応じた魔物の代表者も「思えば、べつに魔界暮らしに不満はなかったのに・・・」とため息交じりに、こぼしたもので。 ・・・魔王こと、前世の恋人は、マジもマジに世界征服をダシに使い、俺を監禁して凌辱するためだけに、全魔物をダマすように巻きこんだのか・・・。 と、つくづく思って、肝が冷えまくったのだが、それはさておき。 もちろん、しおらしくしても魔物は魔物。 代表者の気弱な態度を真に受けないようにしつつ、人と神の連合は「魔界への撤退」を要求。 火口のマグマを空にしておくから、帰りたいヤツは帰れと。 その魔物には手だししないし「よくも家族を!」と恨みつらみのある人間にも、手だしさせないようにする。 期限まで待ってやるが、そのあとはマグマで蓋を。 それを最後に、マグマの水晶を復元できないよう壊す。 つまり、魔界と地上をつなぐ道が完全に閉ざされる。 自然にマグマが枯れない限りは、だが、これから永遠に、人為的に操作ができなくなるわけだ。 のこりたい魔物はのこっていいものの、人に危害を加えたり、生活を脅かすようなことをすれば、神が怒りの鉄槌をくだすと。 逆に人が魔物を虐げたり、不当な目に合わせても、神は同じようにお仕置きをすると。 こちらの条件つきの要求を、一応、代表者は飲んだ。 お互い、約束を守る保証はなかったものの、お互い目を光らせ監視しながら、ことをすすめることに。 多少、トラブルがありつつ、多くの魔物が火口へと退散。 地上にのこった魔物も「よくも魔王さまを!」と決起して暴動を起こすことなく、人里はなれた場所に身を潜めたようで。 約束の期限になり、火口にマグマを溢れさせた。 それを見届けてから、予定どおりに、マグマの水晶を復元不能に粉砕。 チリのような破片を宇宙に散らすほど徹底的に。 そうして、魔界と地上と、住み分けがされる新たな世界となった。 といって、地上にのこった魔物はすくなくなく「戦いをしかけてきたのは向こうのほうだろう!」と魔物不信な人もいて、揉めることもあるが、中立的立場の神が「まあまあ」とおさめていって。
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