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VS魔王②
エントの王と配下たちと俺たちで話しあって、ひねりだした陽動作戦と勇者一行隠密作戦。
その作戦会議には、白魔導師も同席していた。
そう、白魔導師は魔王のスパイ。
じゃあ、すべて魔王に筒ぬけじゃん!
どんな作戦たててもムダじゃん!と嘆きたいところ。
そのことが分かりきったうえで、白魔導師には隠し事をせず、ひそかに第二の計画を立てるなどの小細工をしなかった。
白魔導師も白魔導師で、魔王のひ孫と俺たちが接触するのを阻まず、洗いざらい情報が漏らされても傍観。
そうしてお互い、警戒をしつつ、腹の読みあいをしつつ、妨害や工作活動をすることはなく。
エントに到着する、すこし前、俺と白魔導師とで密約を交わしたからだ。
まず条件を提示し、要求を突きつけたのは俺のほう。
「勇者には魔王を倒させないし、近づけもさせない。
伝説の剣はマグマに捨てる。
だから、火山から俺らが去ったら、魔王に手だしさせないようにしろ」
「どうやって勇者に諦めさせるの?」ともちろん眉をひそめて聞かれたのに、答えとして、俺が考えたシナリオはこうだ。
火口に辿りついたところで、白魔導師が顔面蒼白になってとり乱す。
マグマを無傷で通れる力。
神に授けられたのを、白魔導師が魔法として取得したのが、突然、使えなくなってしまい。
もたもたしているうちに魔物の同時攻撃に人人が命を落としていき、陽動作戦がいつまで持つのか分からない切迫した状況。
後もどりはできないし、時間もない。
いよいよ最終決戦とあって、意気ごむ勇者の緊張が、一瞬、途切れて、慌てふためくはず。
その隙をついて、俺が踊りで洗脳。
洗脳完了したら、格闘家と俺とで勇者を守りながら、火山から放れて、ずっと遠く遠くへ。
人里放れた場所、秘境のような山奥とか、崖沿いの海辺とかに、ぽつんと建つ家に勇者を連れていき、洗脳が解けたら説明を。
火口についたところで、原因不明に白魔導師の魔法が使えなくなり、結局、魔界に下りられず、魔王も倒せなかった。
すごすごと火山から下りて、エントの王や兵士の軍勢とともに力戦したものの、まるで歯が立たずに壊滅状態に。
王は前線で討死、白魔導師も多くの魔物を道連れに自爆。
撤退するときに、勇者が頭を殴られ、気絶したのを俺と格闘家が運びだし、なんとか生きて逃げおおせて。
エントの城に兵士と民衆と立てこもり、魔物の猛攻を食いとめるも、打開策はなく。
そうこうするうちに、世界の国国が滅ぼされて、いよいよ魔王がご登場、トドメをさされるものと絶望したのが。
人が改心するも間にあわず、手を差し伸べるのも間にあわなくて、泣く泣く地上の惨状を見守るしかなった神神。
「もう魔王をとめられない」と諦めて、隠居するように遠くの星へとうつろうとした。
そのとき聞こえてきた悲痛な人人の叫びと、切実な懇願。
「兵として民を死なせたくない、俺はいいからどうか民たちを!」
「せめて子供だけでも助けてくれないでしょうか!」
「今も血を流しているだろう勇者さまにどうかどうか加護を!」
自分でなく人の命乞いをし「どうか神様」と泣きながら跪き祈るのをムシできず。
火口から魔王が悠悠と跳びだしところで、地上の最後の生き残り、エントで籠城する彼らを光で包みこんだ。
その魂を神神は抱いて、ともに遠い星へと。
勇者が目覚めたのは、神の隠居場所であり、天国のような清く美しい地。
魔王打倒をけしかけた神だが、使命を果たせなかったのを責めることなく、労ってくれてご褒美をくれた。
意欲的に勇者になったのでなく、正義感や使命感が強かったわけでもなく、地位も名誉も欲しがることもなく、ただただ、村にとどまっていたかったという彼のささやかな願いを叶えて。
村にいたころのような、平穏で変哲ない日常生活を。
これからは心置きなく、俺と格闘家とだけで、誰にも邪魔されず、なににも心わずらわされず、その日暮らしで過ごしていけるように。
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