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VS魔王⑥
底なしのような火口に身を投げて、この状況に有効的な魔法を使えずアイテムも持たない俺は、ひたすら無気力に落ちていった。
はじめのほうは、肌や肉が剥がれそうな風圧を受けたが、途中から半ば無重力のようになって、ふわふわとしながら落下。
真っ暗で視界ゼロな状況がつづき、すっかり時間感覚は狂ってしまって。
落下距離と時間は、長かったのやら短かったのやら。
そのうち底のほうが、かすかに明るくなり、にわかにトンネルを抜けたように開けた場所へ。
ゆらゆらと落ちて、倒れたのはドームのような広場、そのちょうど真ん中
床は磨きあげられているものの、ドーム型の壁や天井はごつごつとした岩肌が剥きだし。
湿った岩が発光して、全体的に仄かに明るい。
さらに明るさが増して、轟音がしたと思えば、天上の穴にマグマが渦巻いて。
俺はたしかに穴を通りぬけてきたはずだが。
透明なしきりが穴をふさいでいるように、マグマは滴ってこず。
マグマの滝にうたれるかと、身がまえたのを、ほっとして肩の力をぬくも、はっともする。
予想通り、魔界に閉じこめられたわけだ。
俺が床に倒れて、すぐにマグマを発生させたのはもちろん・・・。
うつ伏せに倒れたまま、前方に顔を向けると玉座が。
玉座から見下ろすのは魔王。
左手に持って、かかげるのはマグマの水晶。
声も息も漏らさず、俺と魔王と見つめあうことしばし。
おもむろにマグマの水晶を、玉座にのくぼみにはめこみ、口を開いた。
「このときを待っておったぞ」
ぼそりと呟いたのが、十分に耳に届く。
ドーム型とあって、反響するのもあるが、なにより、静かすぎる。
地上の同時攻撃に魔物をすべて投入して、魔王が一人でお留守番なのか。
いや、そうだとしても、囚われた女神だけは、どこかにいるはず。
女神の声や気配がしないか、耳をすませたのを勘づかれたか「本当にお前は、救いようなく、哀れなものだ」とため息を。
「世界滅亡させてもかまわず、勇者に使命を捨てさせ、戦いから退けさせようとするとは。
仕事とわたし、どっちが大切なのか聞いたときは『仕事』と鼻で笑ったというに。
かつて五股しおった糞以下の下衆が、まったく、どの口がと笑えるような、いいご身分だな」
「な・・・どうし、て・・・!」とみっともなく声を裏返して、あとは絶句。
どうして、前世の俺のこと、しかもプライベートの詳細を知っているのか。
いや、魔王のターゲットが俺ではないかと疑いだしてから、なんとなく前世のことが関連しているように思っていたが。
いや、まさか、それにしても・・・。
頭が混乱の極みで、呆けていたら、にわかに魔王がコウモリのような翼を広げた。
羽ばたいて、次の瞬間、消失。
目にとまらぬ早さで飛翔したらしく、こつ然と俺の目前に。
「っ!」と声をあげる間もなく、仰向けに倒されて、魔王がマントをはためかせ覆いかぶさった。
足の間に体をいれて、ちょうどお互いの股間が当たるように。
恥ずかしい格好ながら、相手がおぞましい魔王とあっては、そこを縮ませて、なんなら、おしっこを漏らしそうなところ。
さすがに反応をせずとも、牙を覗かせつつ扇動的な笑みを向けられ、頬を熱くしてしまう。
くやしくも、あの理性的で信心深い白魔導師が、恋に狂うだけある。
赤々とした肌に、漫画のような筋肉の盛りあがり、鋭利な白い角や牙、コウモリ型の翼。
一見、赤鬼のようだが、顔つきは人らしく、案外、目の表情が豊か。
また黒真珠のように艶やかなのが日本人的。
人から魔物に変形したことで、劣化して醜くなってはいない。
歪にもゼツミョウな均衡を保ち、美貌に磨きがかかって、フェロモンがダダ漏れのような。
魔王の発言による衝撃と、ピンチの現状を、つかの間忘れて、その妖艶さに見惚れるも「う、あ・・・!?」と腰を跳ねる。
いつの間にか、魔王のそこが張りつめて、岩のようにごりごりと。
サブイボが立つような感触にしろ、覗いた限り、太さも長さも存在感も、抜きんでて圧倒的な天下の魔王サイズ。
布越しにも、熱っぽく蒸して、脈打つのが伝わってくるほど。
悪夢で犯されたオデル以上のマンモス級の巨根だ。
オデルと3Pをしたのは、まだ夢だからご都合主義的にどうにかなったものを、現実に魔王の巨根で貫かれたら、俺は木っ端みじんになるのでは・・・。
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