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VS魔王⑦
魔王の大砲のような巨根でぶち抜かれ、入り口付近が切れるどころでなく、風船のように破裂してしまう俺。
忌まわしすぎる想像を振りはらって「な、なんで、俺なんか・・・!」とそもそもの疑問をぶつける。
片方の口角を吊りあげ「まだ分からぬのか?」と巨根を揺すってきて。
「せっかく、わたしの手で、更生不可能な社会のゴミくずのお前を葬りさってやったというに。
まんまと転生して、呪われた身ながら、それなりに冒険ライフを謳歌しておるは、今更、ウブな恋をして、見せつけてくるは。
どこまで、わたしを嘲り愚弄すれば気が済むのか・・・」
回りくどい物言いなれど、云わんとしていることは十二分に伝わり、仰天して「お、お前・・・お前も転生を・・」と呟く。
俺も人のことを云えないが、魔物になってしまった相手はなおのこと、前世の恋人の見る影もない。
だって、性別も変わってしまったし。
それにしても、俺がザコキャラで、前世の恋人はメインの悪役とは、なんだこの扱いの格差は・・・。
なんて、どうでもいいことに文句を垂れるほど、まだ実感が持てずに、ぼんやりとする俺を放って、説明をつづける魔王。
「お前を刺してから、すぐに自分の首も切ったのだ。
気がつけば、重い一物がぶらさがった男、しかも魔王になっておったわ。
よりによって、わたしを鬱陶しがって、お前が夢中になっていた憎々しいゲームのな」
転生して長いこともあって、この世界を画面越しに覗いていたころが、はるか昔のことのように思う。
「根に持ちすぎだろ」と眉をしかめたものの「なにがワルイ」とばかり鼻を鳴らされる。
「こうして、二人とも同じ世界に転生したことで、心中が失敗したように思え、おもしろくなかったのだ。
しかも一物がうっとおしい男、悪の頂点のような魔王になったのは不本意だったが、チャンスとも思ったものよ。
この世界でなら、誰にもなににも横やりを入れられず、お前を独占して我がものにできるかもしれんと。
ただ、すぐに手だしはできなかった。
『勇者一行が旅をして、最終的に魔王を倒す』という基本のゲーム設定を、崩すことはできないようでな。
わたしから、勇者一行に近づくことはできぬ。
わたしの眼前にこない以上、勇者一行に触れることも、魔力で働きかけることもできぬ。
そう、直接は、だ」
「・・・だから、白魔導師にスパイをさせたのか・・・」
白魔導師の一目惚れによる裏切り行為は、基本のゲーム設定に反しないのか。
もともとゲームのシナリオだったのか。
なににしろ、どうしようもなく報われないもので。
白魔導師が首ったけになり、つくした相手は、俺の前世の恋人。
おまけに、今の語りぶりからして「副参謀にして、望むなら子種を与えてやる」との約束を守るつもりは、さらさらなさそう。
まさに「皮肉なものだ」と魔王はいけしゃあしゃあと、ほざきやがる。
「前世に望んだように、せっかく、お前が女に反応しない体になったというに。
そのせいで・・・勇者に惚れこんでしまうなど。
女を笑い者にし侮辱するように五股しておいて、男には一途で健気で、浮気にも目を瞑るとは、どこまでもフザケたヤツよ。
勇者一行がわたしのもとまで辿りつくまで、暇つぶしに、お前に報いを受けさせようとしたものを。
わたしはまだ、おまえを過大評価しておった。
セックス依存症のイカレタ重病者ともなれば、歯が立たんわ」
立派な殺人犯にどうこう偉そうに批評されたくないっつうの。
と苛立ちながらも「はっ」と笑いとばす。
「たかが五股されたくらいで、キレて人をナイフで刺すような、みみっちいヤツが、今世では、がんばったじゃねーの。
ほんと、困っちゃったよなあ、行く先々で男も魔物も俺に魅了されるんだもんよ。
冒険より忙しいほどモテモテだったうえに、五股どころでなく、所かまわずやりまくってたのを、お前、指を咥えて見ているだけだったんだろ?」
魔王のペースを崩そうとして、へらへらと挑発したのを「ふん、愚かなことよ」とにべもなく一蹴。
「愛は男と女の間だけで、成立するもの。
男が男に恋愛するのは、生態的にも社会的にもまちがっておる。
同性同士、惹かれあい欲情してセックスするのは、一種の精神病のせいで、脳機能や本能が狂ってのことよ。
セックス依存症のおまえをはじめ、勇者も格闘家も、心身に問題がある病人に過ぎん。
子供をつくる行為を冒涜するようにセックスに興じる病人どもを、わたしが妬むわけなかろう。
『神よ救ってやらぬか』といっそ目に涙を溢れさせ、哀れんでやったわ。
だが、おまえが救いようのない重病者だろうと、わたしは見限ったりはせんで、このときを待ちわびておったぞ?
わたしと真実の愛を育めば、病は治るだろうからな。
それまでの辛抱だと、応援していたほどだ」
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