VS魔王⑨

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

VS魔王⑨

悪夢で魔物に犯されまくって、まったく不本意にも開発されて鍛えられたもので。 しょっぱなから乳首イジメだけで連続射精し、精液をだしきっても「どれだけ、夢でベロリンチョに乳首を舐められたか」と今更恥じらわず、意識も正気も保ったまま。 ただ夢とチガイ、実質的な疲労感はあり、熱熱の体を汗まみれに、息を切らしながら、ひどい気だるさに目を回す。 一方、魔王のほうは、俺がぶっかけた、白い液体まみれ超巨根を変わらず、筋張ってそり立たせて、かすかにケイレンさせるだけ。 舌をひっこめて、口元を手で拭ったくらいで、すこしも呼吸を乱さず、冷ややかに見下ろした。 俺の息が整ってくると「哀れなヤツよ」と深深とため息を。 「五股しても謝らないどころか、開きなおって『男にしか反応しない体になってもいい』なんて豪語した挙句、ほんとうに男どもに犯されるようになったら、魔物相手でもヨロコブんで、濡れた股を開くおまえは不治の病だ。 肉欲しか目がない、魂が腐りきったおまえには、真の愛が分からぬのだろう」 「真の愛」「真の愛」うるさいな!愛を安売りすんじゃねえよ! 口が利けないかわりに眉をしかめるも、魔王の焦点は合っていなく、俺を見ているよう見ていないらしい。 とくと真の愛を説く自分に酔ったモードで、語りつづける。 「どうして、前世でわたしがお前を殺したと思う? 憎かったからでも、怒った衝動からでもない。 殺す以外、おまえを、わたしのものだけにできなかったからだ。 まさか魂が天に召されないで、こんな、しょうもないゲームの世界に、おまえと共に転生するとは思わなかったが・・・。 とはいえ、今度こそ生きている間に、真の愛を手にできるかもしれないと希望が持てたものよ。 病気でイカレタお前や男たちが、エセ恋愛やマガイモノセックスに興じるのを、大目に見てやった甲斐あって、ようやく叶った。 誰にも手だしできない場所で、さあ、心ゆくまで愛しあおうではないか。 わたしの至高の男根は、セックス依存症のおまえを飽きさせることはない。 衣食住も、なに不自由なく満たしてやるぞ。 愚かしく、くだらない人や魔物の争いなど尻目に、ただただ与えられる快楽に溺れて、わたしとの真の愛を深めればよい」 こいつの思う真の愛とは、相手を監禁して飼うことなのか。 どや顔で講釈を垂れる魔王に反感を抱きながらも、ケチをつけられない。 俺だって、真の愛を語る資格はないし。 なにせ人生が退屈で、セックスで暇つぶしをし、そのことを恥じらわず、疚しいとも思わず、相手に後ろめたさも覚えず。 転生してからも、腐敗しきった人間性をあらためなかったが、いつの間にか暇ではなくなって。 勇者への思いに、うすうす気づきだしたころから。 自分でも不思議でたまらない。 どうして身近で浮気、公認のようなバカップルぶりを見せつけられ、前世の恋人のように嫉妬に狂い、独占欲に駆られるまま、暴走しなかったのか。 おそらく、はじめから諦めていたのだろう。 転生して、女に反応しなくなった俺は、前世の恋人の呪いによるものと冗談でなく考えた。 まさか彼女が魔王に転生したとは思わなかったが、とにかく、呪いのせいで自分だけでなく、周りに迷惑がかかるような気がして。 俺が誰かをスキになったら、とばっちりを受けて、その人も毒牙にかかるかもと。 前世の恋人の嫉妬という怨念が、思い人を殺す危険が高いなら、むしろ結ばれたくはないだろう。 好意を伝えるどころか、気づかれるのもコワイ。 そう、前世の業もあって、俺の恋愛感覚はねじれている。 恋をすれば、どうしだって期待するし、高望みするところ、勇者にアプローチされても、胸が躍るより、腰が引けてしまう。 ふつうはキラわれるのを畏れるものだが、勇者がそっぽを向くと、逆にほっとするようなところもあったり。 いや、さすがにキラわれたくないとはいえ、俺が望むことは、そう多くなかった。 仲間として信頼しつつ、気安く親しくし、パーティーの関係を良好のまま保ちたい。 勇者らしくないくせに、周りに流されるまま、いい子ぶって見栄を張るのを、俺といるときだけでも、だらけて、馬鹿騒ぎをし、屈託なく笑ってほしい。 恋愛、しかも初恋をしているわりに、坊さんのように無欲なものだが、ささやかな望みでさえ、叶えるのは難しかった。 ただ、思いどおりにならずとも「俺がこれだけ励んでいるのに」「どうして、こんなに報われないんだ」と地団太を踏むように勇者を恨むことはなく。 自分に関心を持ってほしい。 自分を特別視してほしい。 恋愛すれば当たり前に望むことなれど、無理難題な要求でもある。 相手の心次第だから、期待しては裏切られてばかり。 分かっていても、飢えたように「わたしを見て!」と要求せざるを得ない、その頑固な呪縛に、どうやら俺は囚われていないようで。 恋愛をすれば、欲張りになりすぎ、期待外れの相手を殺意を抱くほど半狂乱となって、自分がほんとうはなにを求めているのか、分からなくなるのかもしれない。 俺にどうしてほしいか、口で伝えることなく、胸を鋏で貫いた前世の恋人のように。 俺のように、はじめから負け犬決定だと、限られたことしか望めないから、目的も見失わないのだろう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!