3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
VS魔王⑨
悪夢で魔物に犯されまくって、まったく不本意にも開発されて鍛えられたもので。
しょっぱなから乳首イジメだけで連続射精し、精液をだしきっても「どれだけ、夢でベロリンチョに乳首を舐められたか」と今更恥じらわず、意識も正気も保ったまま。
ただ夢とチガイ、実質的な疲労感はあり、熱熱の体を汗まみれに、息を切らしながら、ひどい気だるさに目を回す。
一方、魔王のほうは、俺がぶっかけた、白い液体まみれ超巨根を変わらず、筋張ってそり立たせて、かすかにケイレンさせるだけ。
舌をひっこめて、口元を手で拭ったくらいで、すこしも呼吸を乱さず、冷ややかに見下ろした。
俺の息が整ってくると「哀れなヤツよ」と深深とため息を。
「五股しても謝らないどころか、開きなおって『男にしか反応しない体になってもいい』なんて豪語した挙句、ほんとうに男どもに犯されるようになったら、魔物相手でもヨロコブんで、濡れた股を開くおまえは不治の病だ。
肉欲しか目がない、魂が腐りきったおまえには、真の愛が分からぬのだろう」
「真の愛」「真の愛」うるさいな!愛を安売りすんじゃねえよ!
口が利けないかわりに眉をしかめるも、魔王の焦点は合っていなく、俺を見ているよう見ていないらしい。
とくと真の愛を説く自分に酔ったモードで、語りつづける。
「どうして、前世でわたしがお前を殺したと思う?
憎かったからでも、怒った衝動からでもない。
殺す以外、おまえを、わたしのものだけにできなかったからだ。
まさか魂が天に召されないで、こんな、しょうもないゲームの世界に、おまえと共に転生するとは思わなかったが・・・。
とはいえ、今度こそ生きている間に、真の愛を手にできるかもしれないと希望が持てたものよ。
病気でイカレタお前や男たちが、エセ恋愛やマガイモノセックスに興じるのを、大目に見てやった甲斐あって、ようやく叶った。
誰にも手だしできない場所で、さあ、心ゆくまで愛しあおうではないか。
わたしの至高の男根は、セックス依存症のおまえを飽きさせることはない。
衣食住も、なに不自由なく満たしてやるぞ。
愚かしく、くだらない人や魔物の争いなど尻目に、ただただ与えられる快楽に溺れて、わたしとの真の愛を深めればよい」
こいつの思う真の愛とは、相手を監禁して飼うことなのか。
どや顔で講釈を垂れる魔王に反感を抱きながらも、ケチをつけられない。
俺だって、真の愛を語る資格はないし。
なにせ人生が退屈で、セックスで暇つぶしをし、そのことを恥じらわず、疚しいとも思わず、相手に後ろめたさも覚えず。
転生してからも、腐敗しきった人間性をあらためなかったが、いつの間にか暇ではなくなって。
勇者への思いに、うすうす気づきだしたころから。
自分でも不思議でたまらない。
どうして身近で浮気、公認のようなバカップルぶりを見せつけられ、前世の恋人のように嫉妬に狂い、独占欲に駆られるまま、暴走しなかったのか。
おそらく、はじめから諦めていたのだろう。
転生して、女に反応しなくなった俺は、前世の恋人の呪いによるものと冗談でなく考えた。
まさか彼女が魔王に転生したとは思わなかったが、とにかく、呪いのせいで自分だけでなく、周りに迷惑がかかるような気がして。
俺が誰かをスキになったら、とばっちりを受けて、その人も毒牙にかかるかもと。
前世の恋人の嫉妬という怨念が、思い人を殺す危険が高いなら、むしろ結ばれたくはないだろう。
好意を伝えるどころか、気づかれるのもコワイ。
そう、前世の業もあって、俺の恋愛感覚はねじれている。
恋をすれば、どうしだって期待するし、高望みするところ、勇者にアプローチされても、胸が躍るより、腰が引けてしまう。
ふつうはキラわれるのを畏れるものだが、勇者がそっぽを向くと、逆にほっとするようなところもあったり。
いや、さすがにキラわれたくないとはいえ、俺が望むことは、そう多くなかった。
仲間として信頼しつつ、気安く親しくし、パーティーの関係を良好のまま保ちたい。
勇者らしくないくせに、周りに流されるまま、いい子ぶって見栄を張るのを、俺といるときだけでも、だらけて、馬鹿騒ぎをし、屈託なく笑ってほしい。
恋愛、しかも初恋をしているわりに、坊さんのように無欲なものだが、ささやかな望みでさえ、叶えるのは難しかった。
ただ、思いどおりにならずとも「俺がこれだけ励んでいるのに」「どうして、こんなに報われないんだ」と地団太を踏むように勇者を恨むことはなく。
自分に関心を持ってほしい。
自分を特別視してほしい。
恋愛すれば当たり前に望むことなれど、無理難題な要求でもある。
相手の心次第だから、期待しては裏切られてばかり。
分かっていても、飢えたように「わたしを見て!」と要求せざるを得ない、その頑固な呪縛に、どうやら俺は囚われていないようで。
恋愛をすれば、欲張りになりすぎ、期待外れの相手を殺意を抱くほど半狂乱となって、自分がほんとうはなにを求めているのか、分からなくなるのかもしれない。
俺にどうしてほしいか、口で伝えることなく、胸を鋏で貫いた前世の恋人のように。
俺のように、はじめから負け犬決定だと、限られたことしか望めないから、目的も見失わないのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!