桐山の会社に入社したら茅早のストーカーに会いました

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桐山の会社に入社したら茅早のストーカーに会いました

 どうやったら茅早との距離を詰めることが出来るのか。チャンスは意外な方向から飛んできた。  乗り込んだタクシー。隣に座っているのは、なぜか茅早。これはまさかの展開だったけど、今のこの展開が大きなチャンスかもしれないと自分に言い聞かせていた。   桐山の会社に転職したことで、日々の忙しさに加速度がつき、結局、茅早との距離は近づくこともなかった、ここ数か月。じれったい思いを抱えながらも、茅早へのアプローチ方法を考える余裕もなかったし。 「とりあえず〇〇駅の方に向かってください」  タクシーの運転手に最寄りより一つ遠くの駅名を告げていた。 「大丈夫か?」 「ありがとう」  タクシーの中で俺の隣に座る茅早が小さく呟く。目は伏せたまま、こちらは見ないまま。  「送るから」とタクシーに押し込んでみたものの、彼女がどこに住んでいるか知らないから、とりあえずの目的地。変更可能。さぁ、どうする? 「もし、まだ時間があるようなら、とりあえず、ばあちゃんの家、行ってみない?」 「えっ?なんで?」 「俺、引っ越したんだ、ばあちゃんの家に」 「颯君が?」  やっとこっちを見てくれた。 「退職金と離婚の慰謝料として、ばあちゃんの家をリクエストした」 「そうなの?」 「まぁね。で、さっきの経緯、一応、話、聞きたいかなって。人目のあるところでは話しにくいかなって思って」 「だよね」  一応、現時点では茅早の窮地を救ったヒーローってことでいいよな? 「どっか店行ってもいいけど、ここら辺、俺、土地勘ないし。話聞くだけなら、ついでにばあちゃんに線香あげがてら、っていうのもありかなって」  少し強引かなとも思ったけど、ばあちゃんの話を持ち出せば、茅早は断りにくいかもという思惑があったことは否めない。 「お線香か・・・葬儀以来、一度もあげてなかったな」  ほらね、こちらの思った通りの展開にガッツポーズを取りそうになっていた。 「じゃあ、とりあえず、ばあちゃんの家ってことでいい?」 「ばあちゃんの家、久しぶりだな」 「だな」  珍しく桐山に少しだけ感謝。たまにはお前も役に立つな。
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