会議

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 月に一度の部門長会が始まった。 各部署が業務の進捗を報告する60分の会議だ。部門ごとに10分のプレゼンと短いQ/A、最後は本部長の言葉で締めくくる。事務局の一人を含め参加者は4名の部門長と彼らが指名する部下1名ずつ。コロナ禍以降、オンラインでの開催が恒例となっていた。  トップバッターは管理部、堅物(けんもつ)部長。相変わらず、声のトーンが硬質だ。 「各部、経費の消化が早すぎます。このままでは本部全体で予算オーバーです」  堅物部長はグラフを駆使してデータを明示、自らの存在感を誇示してみせた。その後は人材確保、IT化、SDGなど自部門の進捗を手堅く報告していった。  浅井本部長が疑問を呈した。その口調は前のめりで少々威圧的だった。 「IT化は仕事の合理化が目的のはず。なぜ人をとるのかね?経営の肝は言うまでもなく選択と集中だろう」  前のめった割にはコメントが表面的で浅かった。 「本部長、不要な人材の合理化と必要な人材への投資は切っても切れない経営の両輪です」  堅物部長の返答は堅くて深い。
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