1人が本棚に入れています
本棚に追加
次は私が所属する営業部だ。押手部長のプレゼンが始まった。昨晩、私が深夜までかかってまとめたものだ。今月は成果が今一つだった。だが、そこは営業の押手。押し出しがいい余白の話術が心証の悪さを緩和した。浅井本部長の指摘も浅く、甘くなりがちだった。
「頑張ったが結局、今月は目標未達か...押手部長、残念だな」
「はい。一方で、受注残を来月に持ち越し、二カ月トータルで目標を達成する見込みです」
さすが押手部長、問題の先送りも絶妙だった。
「なるほど...ところで、利益率の推移が悪化傾向だが...」
「その点は棟居が答えます」
問題の押し出しも非常に素早い。私はマイクをオンにした。
「棟居です。このところの物価高でコストが高止まりしております。この状況を踏まえ、当社も打開策を鋭意検討中です」
滑らかだが中身は薄い。これ以上突っ込まれると苦しい。
「そうか...わかった。棟居君、よろしく」
浅井本部長はここでもやっぱり浅かった。
最初のコメントを投稿しよう!