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しかし20年後、大人になった玲香はそこに隙間風のような違和感を覚えた。 その違和感を突き詰めると、そこには他に遊び相手の女の子がいたという直感に行きついた。 それはあまりにも突飛な思い付きだったので、玲香はしばらくそれを幼い自分の妄想として心の中にとどめていたが、祖母が亡くなりその家が売りに出されることになって、遺品整理の意味もかねて20年ぶりにその洋館にいくことになった。 祖父が輸入雑貨店を経営していたので、ちょっとした古美術品やアンティークのインテリアなどもあり、最終的には遺品整理を請け負う業者に任せることになっていたが、その前に何か欲しい物があれば持ち帰っていいと言われていた。 けれども玲香の興味はインテリアや美術品にはなく、いわば過去のミステリーの謎を究明することにあった。 祖母の洋館に行く前に、彼女は母親にそこに自分以外に子供はいなかったかと確認してみた。 母親の返事は、猫はいたけど子供はいなかった、だった。 「猫を子供と勘違いしているんじゃないの。それでなかったら、想像で作り上げたか。ひょっとして幽霊?」 そう言って母親は冗談だというように笑った。 母親は洋館での夏を一緒に過ごしたわけではないのでわからないのだと、玲香は思った。 そして、空想上の友達か幽霊の可能性について思案してみたが、20年も前のしかも幼少期の出来事を解明するのは難しいという結果に終わった。 とにかく行けば何かわかるかもしれないと玲香は希望を持ったが、ふとあることに思い立って、再び謎の迷路に迷い込んだ。 あんなにあの洋館での夏の日々が楽しくて好きだったのに、なぜ7歳の時に打ち切られたのか。 成長して、学校の宿題や勉強に重点を置かなくてはならなくなったから? いや、彼女の記憶では行きたいという玲香の要求に対して、一方的にもうあそこへは行かないと拒否されたのだった。 当時の彼女は、自分にはわからない大人の事情として受け入れざるを得なかった。 その後、学校の生活などが忙しく、洋館のことはうやむやになったまま彼女の心の奥に沈んでいった。 が、大人になった玲香から見た大人の事情とは? 洋館に向かう車の中で自らハンドルを握りながら、玲香は洋館を自分から遠ざけた理由について自問自答していた。
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