83人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
それから大学内で大河の姿を見るたび、胸がドキドキして落ち着かなくて、大河が現れたら逃げるように隠れるのが癖になってしまった。なのに少しでも顔が見たくて、いつも遠くから大河を眺めていた。遼が見つめる大河はいつも穏やかで、誰にでも優しくて、そしてどこかどんくさくて。イケメンなんてみんないけすかないと思っていた遼のイメージとは、ほど遠い性格だった。
合コンで大河の姿を見つけた時は、口から心臓が飛び出るかと思った。本当は嬉しかったのだ、これをきっかけに仲良くなれたらなんて思っていたのに。
(なのに......女と間違えられてキスされるなんて最悪だ)
何が最悪かって、それでも大河とキスできたことを喜んでいる自分がいることだった。
(ああもう......)
分かってしまった。大河を見るとドキドキするのも、逃げ出したくなるのに側にいたいのも、全部、全部。
大河のことが好き、だからだ。
「っ......ふ......」
そう自覚した途端、遼の目から涙が零れ落ちた。
大河が好きだ、きっと初めて会ったあの日から。それを分かっていたけれど、認めるのが怖かっただけだ。でもあんなキスされて、もう隠しきるなんてできない。好きだと自覚した途端失恋するなんて。遼の瞳から次から次へと涙が溢れだす。ベッドに体を沈めると自分の体をギュッと抱きしめる。
遼は溢れ出そうになる嗚咽を、枕に顔を埋めて耐えた
最初のコメントを投稿しよう!