6人が本棚に入れています
本棚に追加
アトリエにこもりきって徹夜で作り続けたら、なんとハーバリウムが20個もできてしまった。
気づいたときには朝になっていて、大量の作品と時間の流れる速さにとても驚いた。
この集中力が勉強にも向いて欲しいものだと我ながら思う。このペースで勉強もできていたなら課題の半分は終わっていたかもしれない。
それはさておき、本当にたくさんのハーバリウムが机の上に並んでいる。
オイルの色、花の色、大きさ、瓶の形からそのほかの装飾まで、一つ一つ八島先輩のことを思いながら丁寧に作った。だからこんなに量があってもそれぞれに個性があるし、どれも自信を持って八島先輩にプレゼントできる。
でも、さすがに20個全部をプレゼントするわけにもいかないので、まず5つに候補を絞った。
さらに吟味して1つ選ぶ。
花が上から下にかけてグラデーションになっている円柱形のにした。もう一つ丸い瓶の青いやつと迷ったけれど、八島先輩の心が晴れるように明るい方を選んだ。
喜んでくれるといいな。
ワクワクしながら袋に詰めた。ラッピングもかなりのこだわりを持って綺麗に包んだ。
今日も図書館で八島先輩と勉強会をするからそこで渡すつもりだ。
午後からだから集合まであと6時間はある。
少し寝よう。このままだと確実に勉強の途中で寝てしまうと思うから。
だるくて重い体を引きずって離れまで行く。目覚ましをセットして重いまぶたを閉じると、すぐに寝てしまった。
目覚ましの音で目を覚ます。
夢を見た。
なんだか怖い夢。
何かと戦っていた。
血みどろで妙にリアルで生々しかった。
でも、怖い夢はいい出来事の予兆だって聞いたことがある。
いいことがもっと起こるといいな、なんて思う。
だけれど、これ以上望みすぎると、跳ね返りで、不幸が降りかかりそうだから、やっぱりいらない。
顔を洗って髪をセットし、真夏でもマスクをつけ、課題をカバンに詰めて、ハーバリウムの入った紙袋を持つ。
玄関を開けると真夏の世界が僕を包み込んだ。
一瞬で冷気は奪われて、もったりとした暑さだけがまとわりつく。
目に痛い日光と、耳に響くセミの声。
でも、今の僕はそんなの全然気にならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!