8、二学期

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数人の先生から事情を聞かれる。 僕はなんて答えたらいいのかわからなくて、言葉を詰まらせてしまった。 それに、いつ父親にこのことが伝わってしまうのか、考えただけで体が震える。 頑張れば頑張るほどに、僕の身の潔白が証明されにくくなっている気がする。 逃げたかった。苦しい。 「ちょっと待ってください!」 いきなりドアが開いた。 入って来たのはユイだった。 「その写真は全部合成です。生徒会のほうで全て解析したので間違いありません」 そのあと、奏も入って来た。 「それに、この写真に写ってるのはここ1週間以内の唯我だと持ち物や身だしなみでわかるが、その期間、唯我は朝に帰ってきたこともないし、深夜まで家を空けたこともない。うちの防犯カメラで全て証明もできる。なにより、この俺が言うんだから間違いない」 ユイだけでは説得力がなかったけど、奏が入って来たことで先生たちはすぐに納得してくれた。 そのあとは、ほとんど奏の力で、デマだったことが学校中に広まった。 それでも僕は教室に居づらくて、その日はずっと保健室のお世話になっていた。 帰り際にユイが訪ねて来た。 「体調はどう?」 「お前のせいでもっと悪くなった」 本当はそんなことを言いたいんじゃない。 僕のために動いてくれてありがとうって言わなきゃいけないのに、ユイを目の前にすると素直な言葉が喉で悪態に変換されてしまう。 「ごめんな」 ユイはまた傷ついたような顔で謝った。 「でも、これだけは伝えたくて。この話は完全にデマって証明されたよ。でも、犯人は見つかりそうにない」 「犯人、お前じゃないの?」 口をついて出た。 驚いた。自分からそんな言葉が出るなんて。 でも、言葉にしてみると、それがかなり現実味を帯びて来て、それが真実なんだと脳が錯覚していく。 「え…」 ユイはひどく驚いた表情をして見せたけど、それも嘘っぽく見えて僕はユイを信じられなくなった。 「マトリって名前知ってるやつなんて奏かお前くらいなのに、なんでデマの情報にそれが載ってるんだ?」 「そんな……」 「自作自演か?おれのデマ流して、おれのことを助けて、味方のフリして取り入ろうとしたんだろ?」 「違う!俺は真鳥を傷つけることは絶対にしない!」 「前もそう言って傷付けたくせに。お前のせいでおれはボロボロだよ。お前の言葉は信用できない。おれの前から消えてくれよ」 そう言って、ユイを突き飛ばした。
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