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新しい家族との関係性にもまだ慣れない中、新学期が始まり、僕は新しい学校に通うことになった。
僕が転入した「ハナノミチ中学校」は、系列の幼稚園や小学校から入っている人がほとんどで、中学から入学する生徒は圧倒的に少なかった。
そのうえ、僕は2年生からの転入だ。
クラスメイトのほとんどがグループに分かれていて、かなり入りにくい雰囲気があった。
さらに、ここの生徒は普通の中学生とは違う。
将来はハナノミチ研究所に勤めるエリートたちだ。
誰もがプライドも警戒心も高く、転校生に優しく声をかけようなんて気はさらさらない。
無駄な馴れ合いはしない風潮らしい。
この学校では能力のある者だけが上り詰めて、高い地位につく。能力の低い奴らは上手く立ち回って「上の人」の権力にすがりつくしかない。
今までの僕が生きてきた世界の普通とは違って、いろいろな思惑が飛び交う苦しい世界だった。
だから、みんな異物である僕の様子を伺っていた。
最初の数日は特に居心地が悪かった。
品定めに耐えながらの一人ぼっち。
視線が痛かった。
僕はクラスメイトに話しかける勇気も強いメンタルも持ち合わせていないから、相変わらず逃げの姿勢で、休み時間はひたすら窓の外を眺めていた。
見えるのは砂じゃないグラウンドと、フェンスの奥に建つハナノミチ高校とドーム型の第一研究所。
周りの土地一帯がハナノミチ研究所の所有で、僕の家も敷地内にあった。
東京ドームが何個も入る広大な土地。なのに、僕にとっては狭くて息苦しかった。
お腹を擦る。気づくといつもみぞおちのあたりが突っ張るように痛い。
でも、こんな憂鬱な生活の中でなんとかやっていけたのは、先生たちが僕のことを気にかけてくれたからだった。
先生は前の学校よりも親切で、わからないことがあればいつも笑顔で対応してくれた。
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