9、文化祭

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文化祭当日は晴れやかな気分ではなかった。 最近の悪い出来事の積み重ねと、秋の憂鬱が負の感情を加速させているせいかもしれない。 でも、肝心の悪い出来事は具体的に思い出せなくなっていて、ただ苦い感情だけが体に溜まっている。 思い出したくないから、勝手に蓋をしてしまっているのだろうか。 ぼんやりとした頭のまま、気がついたら地学室にいた。 どうやって家から歩いてきたかも正直思い出せない。 意識はぼんやりしているけれど、不思議なことに頭は冴えている。 クラスでやっているカフェではオーダーミスも会計のミスも全くなかった。それどころかほかのクラスメイトのミスに気づいてフォローしたくらいだ。 部活のプラネタリウムでもしっかり解説して、頭が良さそうな小学生の質問にも詰まることなく答えられた。 これが良いことなのか悪いことなのか僕にはよくわからないけれど、僕が僕でなくなるような、自分を俯瞰して見ているような、そんな感覚だった。 「綾瀬くん、大丈夫?」 「すみません、なんか最近ぼーっとしてて…」 また八島先輩に心配をかけてしまった。 そんな自分が情けなくなる。 八島先輩はプラネタリウムのチケットを整理する手を止めると、僕の目の前まで来て、口元に優しい笑みを浮かべた。 「よかったら、明日一緒にまわってもらえないかな、文化祭」 「僕でいいんですか」 「もちろんだよ」 そう言ったのに、結局八島先輩とは一緒にまわれなかった。
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