9、文化祭

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約束の時間に落ち合うとすぐに先輩のスマホが鳴った。 それに出た八島先輩は真剣な面持ちで、「はい」と間を置いて何回か繰り返した。 そのトーンからして、悪い知らせなのは僕にもわかった。 電話を切った先輩は僕に頭を下げた。 「ごめんなさい、緊急事態みたい。生徒会室に行ってくる。私から約束したのに本当にごめんなさい」 「いえ、僕のことは気にしないで行ってきてください」 先輩を困らせたくない一心で出た言葉だった。 先輩は最後にもう一度ごめんなさいと言った。 その背中が遠くなって人混みに消えていく。 姿が見えなくなっても僕はずっと同じ方向をただぼんやりと見つめていた。 僕だってそこまで物分かりの悪いやつじゃない。 八島先輩には生徒会の役目があって、これはしょうがないことだって、誰も悪くないって、そうわかっているのに。 黒いモヤモヤが僕の中に溜まっていく。 僕が否定されたような気持ちだ。 やっぱり僕はいらない存在なんじゃないかと考えが飛躍する。 でも、侵食されていない僕の心の一部はまだ正常さを維持する機能を失ってはいないみたいだ。 『いつまでもうじうじしていたって仕方がない』 こんな気分の持ち上げ方なんて、らしくないとわかっている。 普段と違うことを始めている時点で自分が疲弊しているのは分かりきったことだけど、たとえ空回りだとしても、僕は行動せずにはいられなかった。
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