9、文化祭

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八島先輩を追って生徒会室へ向かう。 でも勢いがあまりすぎたのか曲がり角で女子生徒とぶつかってしまった。 お互いにあまり体格が良くないせいか、2人して後ろに倒れてしまった。 僕が謝ると女子のほうもか細い声で「ごめんなさい」と言った。 蚊の鳴くような声だったので、相当痛かったのかと心配したけれど、立ち上がった彼女の顔は感情の色などなく、もう一度あった謝罪の声から察するに、どうやらこの声がデフォルトらしい。 「……もしかして、綾瀬唯我さんですか」 彼女は僕の顔をのぞくとまたか細い声で言った。 あの写真の件以来、僕はそれなりに名が知れてしまっている。 馬鹿にでもされるのかと警戒したけれど、声と表情からしてそういうわけでもないらしいのがわかった。 「私も一応生徒会の役員で……大丈夫かと心配しておりまして」 確かに言われてみれば、生徒会室でこの人を見たことある気がする。 「そうだったんですね。ご心配をおかけしました」 僕を心配してくれる人がいることが素直に嬉しかった。 僕は僕に対して嫌悪感や攻撃的な感情を向ける人ばかりいるものだと思い込んでいた。 実際のところそういう人が多いのも事実だけど、全員がそういうわけではないと知れただけでも少し心が軽くなった気がした。 「何かあればいつでも言ってください。……力になれるかはわからないですけど」 決して愛想が良い人ではないけれど、今の僕には十分過ぎるほど心強い言葉だった。 「ありがとうございます」
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