9、文化祭

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そのあと、すぐに生徒会室に向かったけれど、八島先輩はいなくて、かわりに四虎会長がそこにいた。 「あら、こんにちは」 「お一人ですか?」 「ええ。ずっと1人よ。1時間ほど前からね」 僕は八島先輩が誰かから緊急の内容で呼び出されて、生徒会室に向かったことを伝えた。 「あすかさんは来ていないわ。もしかしたら、ここに来る途中で電話の主に会ったのかもしれないわね」 てっきり僕は八島先輩が四虎会長に呼び出されたものだと思っていた。 いったい誰が八島先輩を呼び出したのだろうと考えていると、四虎会長が「申し訳ないのだけれど」と切り出した。 申し訳ないと思っているのかあやしいほど表情はいつも通り気品に満ちていたけれど、不思議と嫌な感じはしなかった。 「少し手伝ってくれないかしら?」 八島先輩と離れて時間を持て余していた僕は断る理由もなくてすぐに引き受けた。 四虎会長が指さす段ボール箱を抱え、一緒に体育館へと運ぶ。 校舎内はどこも活気で満ちていた。 ここの高校の人でも、さすがに文化祭のときは高校生らしい顔を見せる。 でも、僕はこのノリにも馴染むことはできない。 これは僕が僕である限りどうしようもないのだと思う。 でも、八島先輩と一緒にいるときだけは違う気がする。 先輩と一緒なら世界が輝いて見える。 無敵になれる。 そう思わせてくれる先輩のことが大好きだ。 「人手が足りなかったものだから助かるわ。みなさんほかの仕事で手一杯なの」 少し先を歩く四虎会長は少しだけ歩くスピードを緩めて言った。 「生徒会室に向かう途中で忙しそうにしている生徒会の方と会いましたよ。名前はわからないんですけど、おとなしい感じの人でした」 ちょうど今通りかかった場所が、ついさっき僕が生徒会の人とぶつかって倒れた場所だったので思い起こされた。 「きっと静香ちゃんのことね」 3年生の音無静香先輩は八島先輩と同じく、四虎会長が生徒会に招いた生徒だそうだ。 音無先輩もクラスで浮いた存在だったらしい。 四虎会長はいつでも立場の弱い人の味方な気がする。 さすが八島先輩が尊敬する人なだけある。
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