9、文化祭

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なんで、僕には見せない素の笑顔で、奏には笑いかけるの? なんで、奏は八島先輩の体に触れているのに吐かないの? お互いがお互いの特別なの? 認めない。 だって、僕には八島先輩しかいない。 八島先輩が奪われてしまったら、僕の心は保てない。 僕には八島先輩しかいない。 奏はなんだって持っている。 なんだって持っているくせに、僕の唯一のものを片っ端から無意識に奪っている。 奏は、父親も、絵も、八島先輩も、全部奪う。 ただでさえ何もない僕から、何もかも奪い尽くす。 最初は、奏に認められたい自分がいた。 みんなが偶像のように称える奏の特別になれば、自分の価値が認められると思っていた。 でも、違う。 奏は僕を認める存在なんかじゃない。 僕から全てを奪う存在。 敵だ。 敵は排除しなければならない。 そう思った瞬間、心の黒い感情が溢れ出して、頭の中がぐらりとまわった。 体のコントロールが完全に効かない。 主導権を奪われた。 僕の意識はここにいるのに、違う何かが表にいる。 僕はそれをマトリと呼ぶことにした。
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