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第1話 プロローグ 幸せ
海はもう、親になることを諦めていた。第一子を健康に産んであげることができなかったからだ。
「子どもを産みたい。」
最初に言ったのは海の方だった。
この世界では、約二十年前、少子高齢化に対して政府が打った策によって男性同士でも子どもを授かることができる。
方法としては性行為中、腹の中に核を入れ精子を注ぐというシンプルなものだ。核が受精卵としての役割を果たすのである。
また、多重婚も認められ、それらに対する偏見は老人を除きほとんどない。
海の提案を、初め海の夫である2人、朔、修斗は受け入れなかった。二人ともまだ社会人になったばかりだったし、何より海のことが心配だったからだ。
海と朔、修斗の二人は三つ歳が離れている。現在海は大学二年生、二人は社会人一年目。三人は近所に住む幼馴染で、ほとんど家族同然に育った。恋心に変わったのは誰からでいつ頃だっただろうか。
そんな話はさておき、海は子どもを産みたいと言ってひかない。その間大学はどうするのか、どうやって養うのか、育てられる体力はあるか、色々な話し合いをして、結局二人が折れた。本心では二人とも海との子どもが欲しかった。
海は大学を中退することにした。この世界では、妊娠で中退ということは文字通りおめでたいことで、珍しいことでもなく、逆に国から援助金がもらえるなど推奨されるようなことである。社会人一年目の二人の夫の給料だけでも十分に子どもを育てられるだけの援助がある。
それは三人が子どもを現段階で授かろうとする決め手にもなった。
週末にみんなで市役所まで核受け取りを申請しにいった。そして後日、書類を持って病院に行き、三人でカウンセリング、健康診断、子を授かるための説明などを受け、核の消費期限が切れないうちに使うため日程を組み、三人で使用した。
核は小さな金平糖ほどの大きさで柔らかいため、違和感なくスムーズに入った。
誰に似た子どもが産まれてくるのか、三人とも幸せの絶頂にあった。
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