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第9話 最ゴの手紙
拝啓
小春日和の穏やかな日が続いていますが、皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしかと思います。なんて、堅苦しいよね。
元気にしてるかな。
ボイスメッセージでも伝えた通り、今はこの国で流行っている病に侵されています。でも心配ありません。きっとすぐに良くなります。
ただもし最後の手紙になるのなら、二人に伝えておきたいことがあります。
僕の骨を海にまいて欲しいのです。それは安藤でも、葬儀屋でも、誰がやってくれても良いのですが、ここで意思だけ伝えておきます。そして僕は僕の名前の通り、海の一部となって、君たちを迎えにいきます。
君たちが喧嘩ばかりしていたり、僕の息子を酷く扱ったりしているのなら、海に引き摺り込みみんなで共に暮らしましょう。もしも君たちが幸せそうに暮らしているのなら、僕は海へと帰りましょう。今、僕は幸せです。
僕の子どもはどんな子でしょうか。僕似でしょうか、それとも君たちのどちらかに似ているのですか?
今までの子育てには多大な苦労があったことと思います。安藤から少しではありますが様子を聞いています。
頑張ったね。育ててくれてありがとう。これからもよろしくね。
そして、もしかしたら今、新しい奥さんがいらっしゃるのかもしれませんね。でも、僕の伴侶は朔と修斗、二人だけです。
こんな無様な姿を二人に見られなくて良かった。
さて、この病院の病室にはガーベラの花が置いてあります。これだけ長くいれば廊下を歩くことも何度かあったのですが、廊下にある長いカウンターのようなところにも、チラッと見えた他の個室にもガーベラが置いてありました。
それが僕の個室にだけシオンの花が置いてあるんです。しかも僕の誕生日の日から散るまでの間だけ。
僕別にシオンの花を特別好きなわけではないのですが、付き合いたての頃二人がシオンの花をプレゼントしてくれた時がありましたよね。あの時そういえば一等好きな花だと偽ったことを思い出しまして。もしかして君たちが…?と思ったりしています。
僕、泳ぎは得意です。会いに行くから幸せに暮らしていてください。さようなら、またね!
海は一人その手紙を撫でて微笑み、もう一眠りすることにした。窓からは一筋の光が射していた。
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