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+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.+.。.:* 「ロングセラー小説!この秋、ドラマ化!」 誰に見られるわけでもなく、 ただ流れていた夜のバラエティ番組。 その終わりがけ、 ゲストだった最近話題の若手俳優が始めたドラマの宣伝に、私は目を奪われた。 「私が演じる、貧乏だけど心優しい村娘と」 「僕が演じる、自由気ままな王子が、ドラマチックな恋に落ちる、切ない王国ラブストーリーです。」 「「ぜひ、ご覧ください!」」 仲の良さそうな笑顔を見せる2人の若手俳優は、 近頃見る機会も多く、10代に人気の次世代俳優。 だけど、私が惹かれたのは、彼女たちではなく… 「このお話…」 その原作小説の方だった。 私は勢いよく立ち上がり2階にある自室へと駆け込む。 そして、勉強机の一番目立つところに飾るようにして置いてある一冊の本を手に取った。 「やっぱり、これだ。」 まだ字も読めない幼稚園の頃、 図書館でどうしてか惹かれたこの一冊。 アンティークな額縁のデザインが施され、 その中にキラキラした王子様とお姫様の描かれた素敵な表紙に、 少しざらついた高級感のあるハードカバー。 何に惹かれたのかと聞かれても答えることができないほど、全身からその一冊に目が奪われ、 小学生低学年になっても忘れられなかった私は、お小遣いを握りしめて本屋さんへと向かった。 当時の私には、ずっしりと重く厚い本を両手で抱え家路についたあの日の、 心の奥から沸き上がる感動にも似た気持ちを、私は今でも忘れない。
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