14人が本棚に入れています
本棚に追加
「リア、会いたかった」
シンジュから魔法の基礎を学ぶために空けてもらっている庭の広場に到着するなり私に抱きついてきたのは現将軍の末っ子ライルファイン。
空色の瞳は無邪気そのものな子犬のようにまっすぐに私に向けられていて、抱きつかれているため短めの金髪が頬や首筋に触れていてくすぐったい。
「ファイ、抱きつくのはやめましょう? 私は一応レディですの」
前世の記憶があるから幼児に抱きつかれても微笑ましいだけでときめいたりはしないんだけど、私も一応レディです。
「知ってるよ?」
こてんと首を傾げて不思議そうに私を見つめるファイ。
それならなぜ毎回抱きつくのですか?
「リア様、ファイのそれは、突撃してくるワンコの愛情表現と同じですよ」
苦笑を浮かべながら私にそう告げて、ファイの片腕を掴んで引き剥がしてくれているのは水色の髪のクラウド。
やや猫目なアイスブルーの瞳も、ルミナス閣下と呼ばれている辺境伯にそっくりな閣下の息子で、長男だけど姉と妹がいると聞いたわ。
「リア、ファイはこの通り、まだお子さまでレディの扱いを心得てはいないのです。社交界デビューまでには我々で調教……問題行動を改善できるよう善処いたしますね」
調教なんて言いかけた彼は宰相の一人息子のジークレイン。
黒に近い灰色の髪を首の後ろの低い位置で結わえているレインは、たれ目がちなのになぜか怖そうというか目力のある印象を与える瑠璃色の瞳の幼児だ。
クラウドもシンジュもレインの言葉に頷いているところをみると、ファイには個別のお勉強会も開かれているのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!