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翌日、母と、メイドと護衛騎士数名と共に、私たちはアクアフォティアの丘と呼ばれている草原にやって来た。
母が話していたように、この時期は色とりどりの花が咲いていてとても綺麗だ。
絵本『姫と愛しの神様』では、海からやってきた災いへの生け贄の花嫁だったアクアフォティアの姫を土地神が救出して降り立ったのがこの丘の花畑として描かれている。
ピクニックと聞いていたけれど、丘が見える別荘まで馬車で来て、お弁当は別荘に戻ってから庭園で食べるみたい。
「今日はねえ、お客様も来るのよ」
「お客様?」
幼少期の回想は私の前世のゲーム知識には全く無いから誰なのか検討もつかないけれど。
石碑の文字は長年の雨風で削られてしまったようで読めなかったけれど、母の話では、絵本では土地神様の神力が込められた結界石として描かれていたものがこの石碑みたい。
「神様にお祈りしてから帰りましょうね」
「はい」
母の横に並んで石碑に祈りを捧げる。
もしも本当に土地神様の神力が宿っていて、この地を守ってくれているのならば、どうか未来をお守りください。
バドエンシナリオをぶっ壊してくれるならば、今世での十八年ではなく、私の前世の記憶の全てを願いの対価としてあなたに捧げます。
『――――』
何か聞こえた気がして顔を上げて周囲を見回したけれど、急にキョロキョロした私を不思議そうに見ている母や護衛騎士たちと目があっただけで他には誰もいなかった。
「風の音だったのかなぁ?」
もっとよく調べたかったけれど、来客予定があるのに遅れるわけにはいかないから別荘に戻ったの。
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