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エピローグ
リアンが庭の雑草を抜いていると、
「帽子忘れてるぞ」
アイザックがつばの広い帽子をリアンにかぶせた。
「ありがとう」
「リアンは肌が白いんだから気をつけないと」
頬にキスをされて、リアンはくすぐったそうに身体をよじる。
「シミだらけになったら嫌いになるのか?」
「まさか! でも、ライバルが減っていいかもな」
「おまえがいるのに、変な真似するやつなんかもういないよ」
リアンがクスリと笑う。
(相変わらず自覚ないんだから……)
アイザックに愛されて、リアンはますます美しくなった。
そろそろ仕事に就きたいと言っているが、外で働いたら大変なことになりそうだとアイザックは頭を悩ませている。
「おい、今、鳴き声が聞こえなかったか?」
「え?」
リアンに言われて耳をすませると、確かに弱々しい猫の鳴き声がする。
「どこにいるんだろう……ニャー、ニャー、猫ちゃん、どこにいるの?」
(可愛いっ!)
リアンの鳴き真似にアイザックは身悶えする。
猫がほんとに好きなんだな。
「あ、いた! いたよ、アイザック!」
庭の隅に痩せ細った猫がうずくまっている。
リアンは、そっと猫を抱きあげた。
「怪我はしてないみたい……」
「腹が減ってんだろ。なんか食わせるか」
「子猫じゃないから、魚でもいいよね。確か昨日の残りがあったはず」
猫をアイザックに預け、リアンはバタバタと家の中に入っていく。
汚れてはいるが、ミルクティーのような毛の色をした猫は、アイザックの腕の中で小さく「にゃ……」と鳴いた。
「たぶん、いや、間違いなくおまえはうちの子になるな。……まあ、いいか。おまえがいれば、しばらくは仕事どころじゃなくなるだろうし、おまえと遊ぶ姿も楽しめるしな。
だけど、リアンは俺のものだからな。俺が一番で、おまえは二番だ。忘れるなよ」
アイザックの大人げない発言に、猫は「にゃ」と返事をした。
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