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「大好きって……」
アイザックが目を丸くし、震える声で訊いた。
「それは……ひとりの男として?」
「そうだ。おまえ以外のやつとこういうことをしたいと思わないし、あの女がおまえに触るのも嫌だった……それで、やっとわかったんだ。俺もおまえのことが好きなんだって」
「嬉しいけど……なんか、夢みたいで……」
「夢じゃないぞ。俺たちは家族みたいなもんだけど、これからは恋人でもある」
なぜか胸を張るリアン。
「ふっ、男前すぎるよ、リアン……」
「バカだな。泣いてるのか?」
リアンはアイザックの涙を指でぬぐった。
「……愛してる、リアン」
「俺も愛してるよ、アイザック」
「怪我が良くなったら、リアンのこと抱いていい?」
「いいけど、それまで我慢できるのか?」
「がんばる。……舐めたり触ったりするのはいいでしょ?」
「しょうがないな。手加減しろよ」
「…………」
「おい!」
***
それからは毎日、どちらかのベッドで一緒に寝るようになった。
「狭い……」
リアンが不満げにつぶやく。
「そうか? リアンは腕の中にすっぽり入るから、俺は気にならないけど」
「俺がちっちゃいみたいに言うな! おまえがでかいから、いっつもベッドから落ちそうになるんだよ! 傷が悪化したらどうするんだ!」
「それは問題だ」
「だろ?」
「俺だって我慢の限界というものがある」
「……おまえ、やることしか考えてないだろ」
「しょうがないだろ。男なんだから」
「うるさい! 俺だって男だ!」
「一緒に眠ってもベッドから落ちなきゃいいんだよね。だったら、こうしたらどうかな……」
アイザックの提案で、リアンの部屋を二人の寝室にして、アイザックの部屋はリビング代わりに使うことになった。
「俺ひとりでも大丈夫だから、リアンは持たなくていいのに」
二人でベッドを運びながら、アイザックはハラハラしている。
「借家なんだから、床に傷とかつけない方がいいだろ。肩の可動域は狭くなったけど、普通に持つ分には平気だから」
「ほんと? 無理しないでよ。痛かったらすぐに言ってね」
「はいはい。わかったから、さっさと運ぶぞ。まったく、心配性なんだから」
(文句を言いながらも機嫌は良さそうなだな)
アイアザックがわずかに口角を上げた。
これからはずっと俺のそばがリアンの居場所なんだ。リアンが心から安心できるように頑張らないと。
「俺、リアンのこと大事にするからね!」
「へ? あ、ほら、そこぶつけないように気をつけろよ」
「うん」
二つのベッドをくっつけると、かなり広く感じる。
「境目が気になるなら、どっちかのベッドで寝てもいいしね」
アイザックが満足げに言う。
「それじゃあ移動した意味がないだろ。ところで、猫はいつから飼うんだ?」
「あー、猫かあ。楽しそうだけど……猫が見てたら、いやらしいことしづらくない?」
「そっ……だったら、猫の寝床を寝室以外にすればいいだろ」
アイザックは目をパチクリとさせた。
「猫に勝てるとは思わなかった」
はしゃぐアイザックを横目にリアンが言う。
「わがままな番犬がいるからしょうがない」
「そのあだ名、誰から聞いたの!?」
「どうやら有名らしいな〈リアンの番犬〉」
「うぅ、恥ずかしい……」
「お手」
「え?」
「おーて!」
「あ、うん」
差し出された手のひらに自分の手を重ねると、リアンは満足げにうなずく。
「お座り」
命じられるままアイザックが床に座ると、リアンはよしよしと頭を撫でた。
良い子だと言われて、アイザックは至福の表情を浮かべる。
番犬遊びが楽しくなってきたリアンは、ベッドに腰掛けて足を組み、アイザックを見下ろして言った。
「足を舐めろ」
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