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じゃ、やるか
あれから二人は、毎日同じ部屋で眠っている。
いつもは一つのベッドで、リアンの機嫌が悪いときは別々のベッドで。
リアンの料理の腕はどんどん上達し、かなり手の込んだものも作れるようになった。
休みの日には一緒に街へ出掛けたり、庭の草むしりをしたり。
そんな穏やかな日々のなか、リアンの傷は順調に回復していった。
***
「もう薬を塗らなくていいぞ」
ある日、リアンが宣言した。
「ほんとに?」
アイザックの目が輝く。
「ああ、医者にも見てもらった。さすがに剣を振るのは無理だが、傷は完全にふさがったし、普通に生活する分には何の支障もない。セックスも問題ないそうだ」
「えっ、お医者さんに聞いたの?」
「プロに訊くのが一番だろ」
「それはそうだけど……」
「じゃ、やるか」
「……はい?」
「長いあいだ待たせたな」
リアンがいきなり服を脱ごうとする。
「わー! ちょっと待って、リアン!」
「なんだよ、やりたくないのか?」
「やりたいよ! やりたいけど……リアンは、男同士がどうやってやるか知ってる?」
「それくらい知ってるよ。けつに入れるんだろ?」
「……うん、まあ……それで、俺は入れたい方なんだけど……」
「いいぞ。俺もそのつもりだったし」
「ほんと? 良かった。……それでね、受け入れる方がちゃんと準備しないと、あそこに入らないんだ」
「準備?」
「うん」
「そっか、すぐにできないのか……。ごめん。知らなかったから、何も準備してない……」
リアンが目を伏せると、長い睫毛が影を落とした。
「リアンが嫌じゃなければ、俺が準備するけど……いい?」
「もちろんいいよ。けど、おまえ、どこでそんなこと教わったんだ?」
「え……」
「正直に言わないとやらせないぞ」
(それは困る!)
追い詰められたアイザックは正直に白状した。
「その、いつかリアンとするときのために練習したんだ。大事なところを傷つけると大変だろ?」
「ふうん。で、誰と?」
リアンがじろりと睨む。
「プ、プロの人に教わったんだ。あくまでも練習だから! 浮気とかじゃないからね。俺はリアンひとすじなんだから!」
「ふっ、そんな必死にならなくても。ふふっ、わかったよ。他のやつとやったのは気に入らないけど、確かにどっちもわからないと困るからな。この際、おまえが教わったことを全部教えてくれ」
「わあ、男前……」
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