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これからの二人
診断の結果、リアンの肩は以前のように動かすことができず、剣を握るのは無理だと言われた。
「リアン……」
「なんだよ、おまえが落ち込むことないだろ。しょうがないよ。俺が油断したのが悪いんだ。馬鹿だよなあ。あーあ、入団したばっかりなのに、これからどうすりゃいいんだろうな。はは……」
「リアン」
「寮も出なきゃな。せっかくおまえと同じ部屋になったのに残念だな。新しい同居人とも仲良くやれよ。おまえ、人見知りだから――」
「リアン!」
「なんだよ!」
「俺、家を借りたんだ。古いけど、ちゃんとした一軒家だぞ。猫だって飼える。リアン、飼いたいって言ってただろ」
「……言ったけど」
「退院したら俺と一緒に住もう」
「なんでだよ。俺、もう剣を振れないんだぞ」
「そんなの関係ないよ」
「仕事だって見つかるかどうかわからないし」
「俺、家事とか苦手だから、家のことやってくれるとありがたいな」
「だって、俺は……」
「うん」
「おまえにだけは、迷惑かけたくない……っ」
耐えきれずに泣き出したリアンを、アイザックが優しく抱き寄せる。
「大丈夫だ。何も心配しなくていい。俺たちは家族だろ」
「うん……ありがとう、アイザック」
リアンの涙がアイザックの胸元を濡らしていく。
アイザックは歪んだ欲望が満たされていくのを感じた。
(これでリアンは俺だけのものだ)
昔からリアンは誰にでも優しかった。
俺と違って明るい性格で、知り合うひとは皆リアンを好きになる。
綺麗で優しいリアンのことを、俺はずっと独り占めしたかったんだ。
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