なんでも買取店

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なんでも買取店

 藁にもすがる思いで辿り着いた「なんでも買取店」。レトロなおもちゃやゲーム機が並ぶ店内に入る。扉を閉めれば、カビくさい匂いと、古本の匂いが一気に押し寄せた。  乱雑に並べられた棚を見るよりも先にレジへと向かう。レジの中では、ショッキングピンク色の外はねボブのお姉さんがあくびをしている。 「ふぁああ、あ、いらっしゃーせー」  あくびをしていたことを隠そうともせず、やる気のなさそうな無表情で小さいお辞儀をする。マスクをしてない唇には、キバのようなピアスが二つ。左右対称についている。  自分とは違うタイプのヒトだ、と思った。ピンク色の髪のせいもあってか、誰かを思い浮かべてしまう。そして、胸がまたちくんっと痛む。意を決して唇を開けば、声は緊張のせいかブルブルと震えていた。 「買い取って欲しいものがあって」 「はいはい、なんすか」 「失恋の記憶って、買い取っていただけますか?」  ぴくりっと肩を揺らしてから、お姉さんは「はぁあああ」と深いため息を吐いた。 「だから、そもそものあの人の記憶を売ったらって、言ったんすよ」
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