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第三章・君が遠くて 2ー①
全身がヒリヒリする。
目覚めた時に感じたのは、皮膚の違和感だった。
シーツは精液でドロドロになっていて、冷たくて気持ち悪い。
それでも、体は妙にさっぱりとしている。
その状況から、昨日は散々、七海に全身を愛撫された後、抱えられ、風呂に入れられたのを思い出した。
風呂に入った記憶はあるが、荒淫の後だったので、指一本も動かす力は残っていなかった。
七海が、あんなにも精力的な男だとは知らなかった。
いつもクールに物事を達観していて、幼い頃から大人びていた幼なじみが、あんなにも獣のように盛るとは想像もしなかった。
もしかしたら、彼女である日菜子とは上手くいっていないから、溜まっていたのだろうか。
男の自分でも勃起出来るという事は、七海はバイセクシャルなのだろうか。
そんな事を夢想しながら、ぼんやりとしていた。
だが、完全に覚醒した途端、現実に立ち返った。
七海に合わせる顔がない。
おはよう、というのですら気恥ずかしい。
と、そこまで考えて、将人は自分が家に何の連絡も入れていないのを思い出し、全身の血の気が引いた。
バイトを辞めさせられるどころか、部屋にカメラも設置される。
その恐怖に戦き、飛び起きると、そこには七海の姿はなかった。
サイドボードには、一枚の置き手紙が残されていた。
『昨日は、悪かった。
この事は忘れて、今まで通りにしとって欲しい。
仕事があるので、先に出るけど、料金は翌日の18時まで払ってあるから。
あと、お母さんには昨日、将人はうちの家に泊めたと言ってあるから、安心して。
七海』
「色々と完璧にフォローはしてくれてるんやけどな。……この事は『忘れて』ってのは、どういう意味やねん」
日菜子に浮気がバレたら不味いから、忘れて欲しいという意味か。
幼なじみと乱れた関係になってしまった事への後悔か。
どちらにしても、七海にしてみれば昨日の過ちは『汚点』でしかない。
だが、将人は嬉しかった。
自分から、七海の性器に触れてみたいと思い、それも叶ったのだ。
身体中のあちこちに、鬱血の後が残る程に激しく、七海に触れて貰えた。
もう二度とないとしても。
「お前には忘れたい事かもしれんけど、オレは嬉しかったよ」
七海が忘れたいと言うなら忘れた振りをしてやろう。
この思い出は、自分の胸の奥底にしまい込んで。
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