期間限定彼はダーツで

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 私にダーツの楽しさを教えてくれたのは大学生になってから知り合った駒坂舜。 「樹奈(みきな)、前にダーツやった事あんの? 」  私は首を振ってサワーを飲んだ。その後に私が飲み残したサワーを飲み干す舜。 「上手だなって思って。あっ俺もしかしたら大学中退するかもしれない。でも樹奈や仲間と会いたい時は連絡するわ」  もしかすると、と言っておきながら2年と半年で中退した舜は地元へ帰って行った。  ダーツを教えてもらい腕を磨いた私。そんな私は夜中に二人の名前を書いた、自身特製のダーツの入った段ボール箱を押し入れから出す。  ダーツは段ボールで作った。点数は関係ないから数字は書かない。数字ではなく二人の名前を交互に書いてある。朝沼快地の朝と花尾利晶(りしょう)の花の二文字。  舜と離れて、また逢うまでの間の期間限定で、抜け殻のような私の心を埋めてくれる相手。どちらかを生かし、どちらかを消す。  私は贅沢で身勝手な女だと思う。でも、どちらかに私の抜け殻のような心を埋めてほしい。  1投目は矢がほぼ中心付近。舜が教えてくれたおかげだけれど、今は朝か花の文字に矢を当てないといけない。続けて2投目の矢は中心よりやや下へ。 「もう! 何で当たらないの! 」  その瞬間に私の曲げた肘を優しく支えてくれる懐かしい感覚。舜だ、舜が私の肘の位置を調整してくれている。姿を見せてよ舜。 「俺は朝に当ててほしい。快地はイイ奴だし樹奈を大切にしてくれるよ。ごめん一緒にいれなくて。花には当てるな絶対に」  3投目の矢は朝の字の十に当たった。期間限定の彼氏は朝沼君になった。私は花尾君を消した。舜と花尾君に何があったのだろう。皆とても良い仲間だと思っているのに。 「舜の公認で、逢えるまで快地君に守ってもらうね」                         (了)
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加