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6 炎と桜の傍に
寒さが過ぎ去り、春が訪れた。
勝が刑務所から出て2日目だ。今日は、二人だけでお花見に来ている。
「うわ〜 久しぶりの娑婆だ」
「娑婆なんていうなよ(笑)」
「にしても綺麗… 春っていいよな」
桜が満開になっている。桜に、透き通った川に、何から何まで美しい。
レジャーシートを敷いて、幸星と、持参してきたおにぎりを食べる。塩加減の丁度いい鮭と米がマッチしていて絶品だった。
ああ、何て幸せなんだろう
一筋の涙がツーッと勝の目から流れ落ちる。
「お兄ちゃん、綺麗だね」
「今年は特に凄いよ」
花びらが舞って勝の掌に落ちる。
「幸星、あの約束破ってごめん」
「いいんだよ」
小鳥の囀りを聞きながら、長い間桜を眺め続けた。
「あっ、幸せの青い鳥だ!」
「珍しいな!!」
「よかったじゃん、青い鳥も勝を歓迎してるよ」
桜の儚さだけでなく、美しさも見ないといけない
勝はそう思い知った。
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