2 中学時代

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2 中学時代

一軒家のまばらに立つ盆地に、勝たちの家もあった。彼らは、少し高級な2階建ての洋風の一軒家に住んでいた。駐車場に停められたフォルクスワーゲン・Trocの隣に2台、埃被った自転車が弱々しく倒れている。幸星たちは中学生へ進級し、田んぼをチャリで駆け回るなんてやらなくなったのだ。更に勝は高校受験シーズン真っ只中で、徹夜でひたすらノートと睨めっこしていた。幸星も、最近ゲームにハマっている。しかし、兄弟の仲の良さは全く変わらなかった。 「俺、この前彼女できたんだ」 「自慢かよ、もちろん僕も居るさ」 「本当に?俺、一昨日その子と映画館行ったから」 「まだまだだね、僕はキスもした」 「うわっ、言いふらしてやる」 「何がしたいんだよ!!」 暇な時は、こうやって見栄の張り合いを繰り広げている。 「最近暑いよね〜」 「確かに。じゃんけん負けた方がアイス買ってこない?」 「え… もしかして奢りで?」 「勿論!」 「絶対嫌だわ」 「やろうぜ。はい、じゃんけんぽん」 間髪入れず突然じゃんけんが始められ、咄嗟にグーを出してしまった。 「はい、俺の勝ち〜!!」 「ずるいって、三回勝負だろ」 小学生のような屁理屈を言ってしまった。 結局、幸星は散々煽りたてらた挙句、仕方がないので財布を持ってトボトボとスーパーへ向かった。幸星は意地悪で、兄の嫌いなペパーミントアイスを買った。 「はいよ」 「うわ、ペパーミント!?お兄様になんてことを」 「ごめん、ミスった」 幸星はお茶を濁して自分の部屋へ逃げ込んだ。 *** 「ほら、漫画も買ってきた。」 「ありがとう、今週のはクライマックスなんだ」 週刊誌で連載されている、歴史物の漫画だ。 *** 鎌倉幕府で武士として仕えていた宗寿郎も出陣した。刀を腰に、外へ出る。敵は元(モンゴル)。てつはうを上手く駆使したり、集団で攻めてきたりと想定外の行動を取る。不意打ちを狙おうと、宗寿郎は俵の後ろに隠れ、息を殺した。 元軍との距離が数メートルに達した時、俵から出て元軍の一人を切り裂いた。腹あたりを抑え込んでいる。彼らにも家族がいるだろう、せめて安らかに眠ってほしい。宗寿郎は刀を巧みに使い、一瞬で目の前の元軍を全滅させた。そして、一番偉い人の頭を袋に入れる。歓声に包まれながら、偉い人の頭を掲げたい。肝の据わった武士になって、領地を堂々ともらいたい。その後は、家族と悠長に世間話でもしたいな… しかし、そんな夢は叶わなかった。 「ぐあ…」 倒しきったと油断していた。胸が紅に染まっている。鋭い弓矢が、胸一直線に突き抜けたのであった。宗寿郎は倒れ込んだ。 「やれ」 容赦なく、もう一発放たれる。叫び声すらあげられなかった。血がとめどなく溢れ出て、とうとう宗寿郎の体が冷え始めてきた。 お國のために、身を尽くして… 妻と娘の顔を思い浮かべながら、宗寿郎は息を引き取った。 *** 「おお、なんだか熱いね」 「だろ!俺も炎のように熱く、玉砕って感じで桜のように儚く散りたいよ」 「漫画の読みすぎだって(笑)」 「そうだな、俺おかしくなっちゃったかも」
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