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警察官になって早くも5年、幸星は大きな仕事を任されるようになった。更に交差点で知り合った真由美とも交際を始め、結婚する日も近いかもしれない。
しかし肝心の兄は、突然外に行ったっきり帰ってこなくなった。家族全員、ご飯が喉に通らなくなるほど泣き崩れた。月日が経って、兄の顔が段々薄れているのが辛い。
今はどうしているのだろうかー
「幸星くん」
肩を叩かれ、我に返った。
「はい、なんでしょう」
「窃盗が一件。調査してくれないか」
「分かりました、どこのスーパーです?」
「〇〇号店だ、頼むぞ」
***
涼しげに風鈴が鳴り、ドアが開いた。
「いらっしゃいませ…」
「失礼します、私こういうもので」
「警察の方ですか、どうぞ」
監視カメラの映像を覗き込んだ。すると、午前9時頃、仮面を被った男性が出刃包丁を向けて店員を脅していた。ありったけのお金を袋に詰め込み、逃走する姿が映し出されている。時計を見ると、現在時刻は午後1時。普通なら、ここから徒歩数分の駅へ向かうだろう。一礼して、急いで駅へ向かった。
「袋を抱えた男性がこの駅へ来ませんでした?」
「分かりません… 監視カメラの映像は残っていますよ」
見てみると、9時12分にそれらしき人物が案の定映り込んでいた。
***
黒いベンツから、痩せた女性が半ば投げられるように車から出された。
「立て」
屈強な男たちが、事務所に連れて行く。
「連れて来たぞ」
縄で椅子に縛りつけた。
「すげー美人だ。こいつはいい」
勝は麻薬の売人に紹介され、ヤクザの一員になっていたのだ。
勝は、女性を連れてきた男たちをさっさと外に出す。ドアを施錠して、女性に面と向かった。
「やめて、何する気よ」
服のボタンに手が差し掛かる…と思えば、彼女を拘束していた縄を丁寧にほどき始めた。女性は訝しげに勝を見つめた。
「どういうこと…?」
「帰っていいぞ、ほらここの裏口から」
女性は終始愕然とした様子で、外へ出ていった。
勝は、強姦なんてしたくない。そんなクソみたいな方法で性欲を満たしたくなかった。
違う、こんな事がしたいんじゃないー
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