新堂さんと恋の糸

2. 取材の条件

「今日はお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございます」

「そういう堅苦しいのはいいから、本題」

「は、はい。今回弊社の雑誌で、新堂さんの特集記事を組みたいと思っています。条件面に関しては以前メールした内容の通りですが、今日お持ちしたのは企画書と誌面の構成案です」

新堂さんがテーブルの上の資料をめくる。

「毎号6ページ全4回の連載を予定しています。新堂さんはまず海外の受賞で注目されて海外人気も高いですが、私たちは新堂さんのデザインには日本の職人技術と融合したものが多いなと感じていて、第1回はその部分にフォーカスした企画にしたいと考えています」

私は緊張しながらも、準備してきた資料をもとに説明していく。

編集部の主任や編集長に何度も何度も直されて、ブラッシュアップしてきた資料。もう内容もそらで言えるほど頭に入っている。

「…そして、今年は初めての個展を開かれる予定だとお聞きました。それで、もしよろしければ最終回の第4回はページを倍増して、個展の特集を組ませてもらえたらと考えています」

「ふぅん…」

一通り説明し終えて、小さく息をつく。

新堂さんは企画書のページを行ったり来たりとめくったりして、意外なほどしっかりと資料を読み込んでくれていた。ところどころにペンで印をつけたりしていて、静かな会議室にその音だけが響く。

どこか不備があっただろうか。

私はその一挙手一投足が気になって仕方がなかった。