2. 取材の条件

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「受けてもいい」 「……え?」 「取材、受けてもいいって言ってんの」 私は驚いてテーブルに落としていた目線を戻すと、思いがけない言葉に目を何度か瞬かせた。 「ほ、本当ですかっ!?」 思わず立ち上がりそうになった私に、新堂さんは「ただし条件がある」と言った。 「じょ、条件ですか?」 何だろう、取材料を上げろとかだろうか。 もしそうだとしたら、さすがに私の一存では決められない。 「うちの事務所で働け。そこでの働きぶりを見て取材を受けるか決める」 予想の斜め上をいく条件に、私は目を丸くした。 働く?私が?新堂さんの事務所で…?? 「は、働くってそんな無理ですよ!だって仕事が、」 「別に朝から夜までってわけじゃない。1日のうち何時間か事務所に来てくれればいい」 「でもっ、」 「無理ならこの話は無かったことにする。それだけ」 そう言われると、私の立場は圧倒的に弱い。 この様子だと、この場でYESかNOかを決めなければならないみたいだ。 私は頭の中でいろんなことを天秤にかけて考えるけれど、正直私の中では答えは決まっていた。 「どうする、あと2分で約束の時間も終わるけど?」 「分かりました、やります」 「やります?」 「……働かせて、いただきます」 私の答えに新堂さんは満足そうに微笑む。 あぁ、言ってしまった。 主任にも編集長にも相談もしないで。後で絶対に怒られる。 新堂さんは私の葛藤を知ってか知らずか、飄々とジャケットのポケットからスマートフォンを取り出した。 「連絡先教えろ。今度うちの事務所に来てもらうから、日時と場所はこれで教える」 そうして私は新堂さんの連絡先を交換した。 自分のアドレス帳に『新堂梓真』と入ったのをまじまじと見つめていたので、新堂さんの次の言葉に反応するのが遅れた。 「ちょうど雑用係を探してたところだから助かる」 (へ?ざ、雑用…?) 不穏な単語が耳に入ったけれど、時すでに遅し。 スマートフォンから顔を上げると、至近距離に新堂さんの顔があった。 「じゃあこれからよろしく、櫻井さん?」
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